2026年2月1日日曜日

[IS-REC/ISSUES]『いいたい放題』“食べられない"は、“命の分かれ目?”~超高齢者の胃瘻造設

  超高齢者の胃瘻造設依頼が増加している.ムセや咳き込みで食事が摂れず栄養障害を来した例、食事介助で誤嚥を繰り返し喀痰喀出困難となった例など、その多くは施設利用中の患者さんで施設職員が対処に困り果て紹介となったケースである.一方、在宅療養中の高齢者が自ら嚥下困難で来院するケースはすこぶる少ない.また意を決して来院した場合でも症状が相当進行しており短期の外来対応では困難な場合がほとんどである.生活体力や生命維持に必要十分な栄養を確保するにはたとえ一部の食材を選択して口にできても胃瘻という代替栄養路も併せて必要な場合が多く、入院治療が必要なことを説明する.しかし多くの患者は事の重大さに関わらず即座の対応を拒否し結局、誤嚥性肺炎を繰り返して急性期病院に入院する事となる.

●嚥下障害入院の現状

 摂食嚥下障害を主病名の一つとして当院に入院した患者さんの退院時予後を検討した.2022/10/01~2023/10/31までの13カ月間、該当する入院患者60名.嚥下障害・栄養障害への主たる対応は、経鼻胃管13、嚥下困難食による対応11、維持的静脈栄養4、胃瘻造設9、対症療法(看取り・早期死亡)23である.嚥下障害・栄養障害で積極的対応が出来なければその多くが死に至る結果であった.また継続入院例を除く入院期間は2~156日(中央値51日)で治療法によらず入院が長期化する傾向であった.胃瘻造設9例でみると栄養管理の問題が解決しても夜間喀痰吸引の必要などで施設再入所が困難となり退院が決まらない場合が多い.

●胃瘻造設が生命予後・QOLを維持改善した例

(1)ケースKS(PEG当時78歳・女性)

 一人暮らしで以前から誤嚥による肺炎を繰り返し、肺膿瘍を合併した.由利組合総合病院で胃瘻造設を含む治療を受け、その後の嚥下を含む訓練を希望して当院入院となる.嚥下評価の結果、食品の適切な種類とその形態で経口摂取可能と判断した.補水と内服のみ胃瘻を利用し嚥下訓練後、施設入所となった.その後、経口摂取継続と補水・服薬のみ胃瘻の方針は変わらず、約10年後の現在も家族に連れられて定期的胃瘻ボタン交換目的に当院外来を受診している.

(2)ケースTS(PEG時74歳・女性)

 パーキンソン病でくも膜下出血を併発した.経口摂取困難で胃瘻造設となり、治療継続目的に紹介された.嚥下評価の結果、補水と内服薬のみ胃瘻から投与となった.維持的訓練を継続し歩行器歩行可能で、日中は車椅子に座りデイルームで趣味の読書やスケッチをしていた.その後パーキンソン病の進行で寡動・振戦が悪化し、3年目に鬼籍に入った.

(3)ケースTA(PEG時85歳・女性)

 アルツハイマー型認知症で陽性症状が強く菅原病院入院中であった.転倒骨折して寝たきりとなり当院へ転院となった.簡単な意思疎通可能なほかは、食事を含め介護抵抗が激しかった.家族の希望も強く胃瘻造設による強制栄養となった。家族とのやりとりや手を握り視線を合わせたスタッフとの対話は意外に大人しく対応し、結局老健施設入所退院となった.その後、家族に連れられ定期的に胃瘻ボタン交換に外来を受診していたが、約6年目の本年91歳で死亡した.

●終末期医療ではない胃瘻造設

 “食べる・呑む”機能=摂食嚥下機能も加齢に伴って徐々に低下する.いわゆる口まわりの衰えであるオーラルフレイルの時期から予防が大切であるが、脳卒中や神経筋疾患、認知症でない限り、相当高齢となるまで摂食嚥下機能は保たれる.したがってひとたび“食べる・呑む”機能が障害されると、終末期としてその積極的対応を放棄する場合が多いように思われる.胃瘻造設は口から食べることを排除するものではなく、食種や食形態を選んで継続も可能である.本人や家族が望むのであれば、生命予後・QOLを維持改善する手段の一つとして胃瘻を検討して良いのではないだろうか.

※当該記事は2026年1月、由利本荘医師会報NO.616『新春特集号』に掲載した

2026年1月1日木曜日

[IS-REC/ISSUES]私の医師会病院10年~リハビリテーション科外来~

●リハ医はよくわからない

 内科医や外科医などと違って、リハビリテーション科医師(以下、“リハ医”)はその存在がよく分かられていない.リハ医者を名乗る者をみると、そのキャリアはさまざま.つい最近までは何を専門として何をやっている者をリハ医と称するか、そのコンセンサスのない時期が相当長く続いていたように思われる.今でこそ大学にリハ医学講座が増え、そこでストレート研修を終えて専門医となるリハ医も多くなった.リハ医療は患者の持つ疾患とその結果生じる生活機能上の障害を対象とするチーム医療なので、その臨床科としての実際的ニーズは相当高い.他方、様々なキャリアを経てリハ医となった者は、やはり自分の経験やスキル、判断力を総合的臨床能力として活かしたい.その場合、リハ医の主たる力量発揮の場は、やはり外来診療である.

●医師会病院10年、私の外来診療

 前職の県立リハセンでは、外来患者の多くがリハ依頼の新患患者であった.医師会病院に来てからしばらくの間、整形外科医不在の影響で主にその代理的診療をこなしていた.整形外科医の前院長外来を引き継いた形である.また元々私のライフワークであった脳卒中や高齢障害者のリハ、特に高次脳機能障害や摂食嚥下機能障害・栄養障害などについても現院長の御配慮で赴任当初から徐々に体制を整えていくことができた.入院リハ患者を対象とした摂食嚥下機能評価として嚥下内視鏡(VE)、嚥下造影(VF)装置を導入した.外来紹介患者を対象にした“摂食嚥下機能評価短期入院”も立ち上げた.またスペースのやりくりに難儀したが言語訓練室を拡充し、未就学児童を対象としたコミュニケーション障害(機能性構音障害や言語発達遅滞)患児を受け入れやすくした.診療内容に関わる診療報酬改訂の影響も大きかった.療養病棟に代わる介護医療院の開設など病院全体に関わることのほか、リハ科を含む外来診療にも大きな影響があった.

●訪問リハ医師診察と生活習慣病療養管理

 いずれも診療報酬点数に影響する形で導入された.それまで訪問リハは依頼元の診療情報提供書からリハ医が指示を出し、担当スタッフから訪問時の報告を受ける形で完了したが、新たに2~3カ月に一度リハ医の直接診察が必要となった.外来に来院出来る患者を除いてセラピストと一緒に患家へ出向くこととなる.主治医が別の場合が多いので、診察も指導も疾患や服薬を除いた障害状態の変化や入浴・排泄・食事など生活機能上の問題を評価しアドバイスする.外来受診可能な患者についてもほぼ同様だが力点は肥満と廃用予防の食事・運動に関する評価と指導が多くなる.生活習慣病療養管理は高血圧・糖尿病・脂質異常症のある患者がすべて対象で、指導は食事と運動に加え、服薬管理と採血検査結果説明などとなる.

●痙性運動障害(SMD)のボツリヌストキシン療法

 ここ数年、重度痙性麻痺でケアが大変な場合や患側上下肢管理を目的にボツリヌストキシン施注を行ってきた.高齢者が増えて比較的若い歩行自立のケースや改善の余地がある上肢の補助手レベル患者は稀で、結果としてSMDで施注適応となる例は必ずしも多くはない.しかし施注を反復してその効果を実感したリピーターが徐々に増えてきている.現在はリハセン同僚の荒巻晋治先生の応援を受けながら主に午後の時間に行っている.

●胃瘻造設患者のアフターケア

 赴任10年が経過し胃瘻造設例も増えた.造設後施設に戻った患者が定期的に胃瘻ボタン交換にやって来る.高齢造設患者でも胃瘻の延命効果は大きい.交換は容易で嘱託医にお願いしているケースも多いが、定期的に外来にやってくる患者さんと交換時にコミュニケーションを取るのも楽しいものだ.

●医師会病院10年目リハ医の今

 外科系医師として出発した私はリハ科担当当初、痙性麻痺の腱切り、経口摂取にこだわる嚥下障害例の喉頭摘出など、整形外科や耳鼻科の支援を受けながら“外科系リハ医“としてスタートした.また内視鏡医・向島 偕先生の協力を得て秋田県内でも相当早く胃瘻造設を開始した.一定期間大学リハ部・中村隆一教授の元で研修を受け、県立リハセンに勤務してからは大学同門の千田富義先生の指導を受けオーソドックスなリハ診療を実践してきた.そして医師会病院に赴任して以後、院内同僚の先生の知恵と知識に学びながら当院に合ったリハ医療を展開してきている.その自己満足度は高い.しかし困ったことに午前中の外来診療が昼を過ぎても終わらなくなってしまった.低血糖と同僚外来看護師さんの迷惑にはらはらしながら今日に至っている.

(本稿は2026年1月、秋田県医師会報NO.1644 『新春随想号』に掲載した)


 

明けましておめでとうございます 2026年 元旦

  早いもので現在の病院にリハ医として奉職し昨年暮、永年勤続10年の表彰を受けました.これまで同僚職員や医師会諸先生、前職リハセンスタッフなど、多数の方々から御支援を賜り、何とか現在に至っております.
 今後ともよろしくお願い申し上げます.

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