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2026年7月18日土曜日

[IS-REC/ISSUES]高齢者の多病・重複障害~リハ科の私はどう考えどう対処しているか~

●多病・重複障害・複雑な罹病歴

 社会に戻す最終段階医療の一端はリハ科が担っている。リハ科入院は患者さんを生活の場に戻す“活かすための最終段階医療”の位置づけである。患者さんの多くは超高齢者で、多数の背景と既往・現疾患を持ち、その結果多数の重複する障害を抱えて入院してくる。持参する詳細なデータ、長文の紹介状に、たくさんの病名や障害、臨床経過が書かれ、治療に必要となったたくさんの薬剤が記載されている。疾患管理・治療の継続・リハビリ、という“活かして生活の場に戻す医療”を期待して紹介元から託された入院である。バトンを渡される側にはその意識・意気込みがあっても、紹介書類の束にすっかり度肝を抜かれ、怯んでしまっているのが実態である。しかし実際に患者さんと接し診察して、本人や家族の話を聴き、リハ医の経験知とリハ手法の進歩進展から自分なりに出来ることを頭で描くと、何とかなりそうな気がしてくるから不思議である。

●栄養障害・生活習慣病・骨関節疾患・心腎疾患の重複

  高齢者にみる摂食嚥下困難と栄養障害、その結果生じるフレイルやサルコペニアはリハ医の立場からずっと取り組んできた。また生活習慣病である高血圧・脂質異常症・糖尿病も運動と栄養の面から疾患自体を含め長年対応している。骨関節疾患や呼吸・循環器疾患が主要疾患であれば、同僚のS先生やY先生、T先生の出番であり私の悩むところではない。問題はあくまでもこれらが重複する多病状態(multi-morbidity)とその結果生じる多重・重複障害(multiple disabilities)である。

●悩ましい心・腎疾患

 慢性心不全や慢性腎臓病(CKD)を背景に持つ例が多くなっている。慢性心不全は65歳以上で5~10%だが85歳を超える当院ではその数倍の印象である。慢性心不全は高齢者の能力低下原因として、治療管理の進歩とともにリハ分野でも心臓リハとして眼を見張る進歩がみられている。心不全治療薬は、Fantastic4(Β遮断薬・MRA・ARII・SGLT2阻害薬)が定番であり、当科紹介患者の服用も多い。しかしリハ入院中の場面ではバイタルチェックや電解質を含む採血検査の間隔が開き疎かになりがちなことと、体力低下で脱水・感染を来し、それを引き金に致命的となるる場合(BRASH症候群)があり要注意である。またCKDでも栄養不十分や電解質異常から機能レベルが入院時より更に下降して寝たきりとなるので気が抜けない。

●Tさん(84歳)の場合

 Tさんは、心・肺疾患などを背景に、主病の胸部大動脈瘤術後に脳卒中を併発して急性期治療後、当院紹介となった。当院紹介時、現疾患6、既往疾患4を抱え、15の内服薬継続で入院した。ワーファリンなど薬の管理もさることながら、急性期の嚥下機能低下による低栄養・サルコペニア、脳梗塞による注意障害や判断力低下、筋力低下と体幹・下肢バランス能力低下が問題であった。しかしTさんの場合は、予想した以上に順調に経過し、嚥下機能・栄養状態改善、整地・短距離であれば独歩も可能となって自宅退院した。Tさんは多病・重複障害を抱えていたが、主病発症前の生活で認知機能の低下がなく、元・公務員幹部職員として自分に誇りを持ち、また規則正しい生活と定期的運動を行い生活体力が維持されていた。回復が良かったのは、この高い病前生活機能が幸いしたと考えている。

●多病・重複障害患者のリハ

 ここ10数年来、リハ分野では心・腎疾患など内部障害リハの進歩が著しい。身体障害を抱える高齢者リハもこの恩恵に預かって、以前であれば積極的リハの適応外として障害に合わせた退院先探しと施設入所までの時間稼ぎが入院の主目的となっていた。しかし心血管疾患後の心臓リハに関する多数の研究で、安定期・慢性期の継続的運動療法で長期の生命・機能予後を改善することがが示され、計測数値的にもそれが裏付けられた。また、運動の種類や負荷方法も、心血管疾患に関する運動処方として明確な原則が確立され、頻度・強度・時間・種類・運動量・運動漸増の原則(FITT-VP)が示され、特に“やってるつもりだけの運動はダメ”と運動療法の管理の重要性が言われている。

●多病・重複障害患者の予後を決めるもの

 心肺・腎疾患で日常生活の身体活動量と死亡率が逆相関することが疫学的に示され、またTさんの事例でも知れるように認知機能を含む病前の生活機能がどれだけ維持されていたかが多病・重複障害でも機能予後を決めている。年齢がいっても食事や運動に気配りを欠かさず生活機能を維持する大切さを訴えていきたいと思っている。





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2026年2月1日日曜日

[IS-REC/ISSUES]『いいたい放題』“食べられない"は、“命の分かれ目?”~超高齢者の胃瘻造設

  超高齢者の胃瘻造設依頼が増加している.ムセや咳き込みで食事が摂れず栄養障害を来した例、食事介助で誤嚥を繰り返し喀痰喀出困難となった例など、その多くは施設利用中の患者さんで施設職員が対処に困り果て紹介となったケースである.一方、在宅療養中の高齢者が自ら嚥下困難で来院するケースはすこぶる少ない.また意を決して来院した場合でも症状が相当進行しており短期の外来対応では困難な場合がほとんどである.生活体力や生命維持に必要十分な栄養を確保するにはたとえ一部の食材を選択して口にできても胃瘻という代替栄養路も併せて必要な場合が多く、入院治療が必要なことを説明する.しかし多くの患者は事の重大さに関わらず即座の対応を拒否し結局、誤嚥性肺炎を繰り返して急性期病院に入院する事となる.

●嚥下障害入院の現状

 摂食嚥下障害を主病名の一つとして当院に入院した患者さんの退院時予後を検討した.2022/10/01~2023/10/31までの13カ月間、該当する入院患者60名.嚥下障害・栄養障害への主たる対応は、経鼻胃管13、嚥下困難食による対応11、維持的静脈栄養4、胃瘻造設9、対症療法(看取り・早期死亡)23である.嚥下障害・栄養障害で積極的対応が出来なければその多くが死に至る結果であった.また継続入院例を除く入院期間は2~156日(中央値51日)で治療法によらず入院が長期化する傾向であった.胃瘻造設9例でみると栄養管理の問題が解決しても夜間喀痰吸引の必要などで施設再入所が困難となり退院が決まらない場合が多い.

●胃瘻造設が生命予後・QOLを維持改善した例

(1)ケースKS(PEG当時78歳・女性)

 一人暮らしで以前から誤嚥による肺炎を繰り返し、肺膿瘍を合併した.由利組合総合病院で胃瘻造設を含む治療を受け、その後の嚥下を含む訓練を希望して当院入院となる.嚥下評価の結果、食品の適切な種類とその形態で経口摂取可能と判断した.補水と内服のみ胃瘻を利用し嚥下訓練後、施設入所となった.その後、経口摂取継続と補水・服薬のみ胃瘻の方針は変わらず、約10年後の現在も家族に連れられて定期的胃瘻ボタン交換目的に当院外来を受診している.

(2)ケースTS(PEG時74歳・女性)

 パーキンソン病でくも膜下出血を併発した.経口摂取困難で胃瘻造設となり、治療継続目的に紹介された.嚥下評価の結果、補水と内服薬のみ胃瘻から投与となった.維持的訓練を継続し歩行器歩行可能で、日中は車椅子に座りデイルームで趣味の読書やスケッチをしていた.その後パーキンソン病の進行で寡動・振戦が悪化し、3年目に鬼籍に入った.

(3)ケースTA(PEG時85歳・女性)

 アルツハイマー型認知症で陽性症状が強く菅原病院入院中であった.転倒骨折して寝たきりとなり当院へ転院となった.簡単な意思疎通可能なほかは、食事を含め介護抵抗が激しかった.家族の希望も強く胃瘻造設による強制栄養となった。家族とのやりとりや手を握り視線を合わせたスタッフとの対話は意外に大人しく対応し、結局老健施設入所退院となった.その後、家族に連れられ定期的に胃瘻ボタン交換に外来を受診していたが、約6年目の本年91歳で死亡した.

●終末期医療ではない胃瘻造設

 “食べる・呑む”機能=摂食嚥下機能も加齢に伴って徐々に低下する.いわゆる口まわりの衰えであるオーラルフレイルの時期から予防が大切であるが、脳卒中や神経筋疾患、認知症でない限り、相当高齢となるまで摂食嚥下機能は保たれる.したがってひとたび“食べる・呑む”機能が障害されると、終末期としてその積極的対応を放棄する場合が多いように思われる.胃瘻造設は口から食べることを排除するものではなく、食種や食形態を選んで継続も可能である.本人や家族が望むのであれば、生命予後・QOLを維持改善する手段の一つとして胃瘻を検討して良いのではないだろうか.

※当該記事は2026年1月、由利本荘医師会報NO.616『新春特集号』に掲載した

2026年1月1日木曜日

[IS-REC/ISSUES]私の医師会病院10年~リハビリテーション科外来~

●リハ医はよくわからない

 内科医や外科医などと違って、リハビリテーション科医師(以下、“リハ医”)はその存在がよく分かられていない.リハ医者を名乗る者をみると、そのキャリアはさまざま.つい最近までは何を専門として何をやっている者をリハ医と称するか、そのコンセンサスのない時期が相当長く続いていたように思われる.今でこそ大学にリハ医学講座が増え、そこでストレート研修を終えて専門医となるリハ医も多くなった.リハ医療は患者の持つ疾患とその結果生じる生活機能上の障害を対象とするチーム医療なので、その臨床科としての実際的ニーズは相当高い.他方、様々なキャリアを経てリハ医となった者は、やはり自分の経験やスキル、判断力を総合的臨床能力として活かしたい.その場合、リハ医の主たる力量発揮の場は、やはり外来診療である.

●医師会病院10年、私の外来診療

 前職の県立リハセンでは、外来患者の多くがリハ依頼の新患患者であった.医師会病院に来てからしばらくの間、整形外科医不在の影響で主にその代理的診療をこなしていた.整形外科医の前院長外来を引き継いた形である.また元々私のライフワークであった脳卒中や高齢障害者のリハ、特に高次脳機能障害や摂食嚥下機能障害・栄養障害などについても現院長の御配慮で赴任当初から徐々に体制を整えていくことができた.入院リハ患者を対象とした摂食嚥下機能評価として嚥下内視鏡(VE)、嚥下造影(VF)装置を導入した.外来紹介患者を対象にした“摂食嚥下機能評価短期入院”も立ち上げた.またスペースのやりくりに難儀したが言語訓練室を拡充し、未就学児童を対象としたコミュニケーション障害(機能性構音障害や言語発達遅滞)患児を受け入れやすくした.診療内容に関わる診療報酬改訂の影響も大きかった.療養病棟に代わる介護医療院の開設など病院全体に関わることのほか、リハ科を含む外来診療にも大きな影響があった.

●訪問リハ医師診察と生活習慣病療養管理

 いずれも診療報酬点数に影響する形で導入された.それまで訪問リハは依頼元の診療情報提供書からリハ医が指示を出し、担当スタッフから訪問時の報告を受ける形で完了したが、新たに2~3カ月に一度リハ医の直接診察が必要となった.外来に来院出来る患者を除いてセラピストと一緒に患家へ出向くこととなる.主治医が別の場合が多いので、診察も指導も疾患や服薬を除いた障害状態の変化や入浴・排泄・食事など生活機能上の問題を評価しアドバイスする.外来受診可能な患者についてもほぼ同様だが力点は肥満と廃用予防の食事・運動に関する評価と指導が多くなる.生活習慣病療養管理は高血圧・糖尿病・脂質異常症のある患者がすべて対象で、指導は食事と運動に加え、服薬管理と採血検査結果説明などとなる.

●痙性運動障害(SMD)のボツリヌストキシン療法

 ここ数年、重度痙性麻痺でケアが大変な場合や患側上下肢管理を目的にボツリヌストキシン施注を行ってきた.高齢者が増えて比較的若い歩行自立のケースや改善の余地がある上肢の補助手レベル患者は稀で、結果としてSMDで施注適応となる例は必ずしも多くはない.しかし施注を反復してその効果を実感したリピーターが徐々に増えてきている.現在はリハセン同僚の荒巻晋治先生の応援を受けながら主に午後の時間に行っている.

●胃瘻造設患者のアフターケア

 赴任10年が経過し胃瘻造設例も増えた.造設後施設に戻った患者が定期的に胃瘻ボタン交換にやって来る.高齢造設患者でも胃瘻の延命効果は大きい.交換は容易で嘱託医にお願いしているケースも多いが、定期的に外来にやってくる患者さんと交換時にコミュニケーションを取るのも楽しいものだ.

●医師会病院10年目リハ医の今

 外科系医師として出発した私はリハ科担当当初、痙性麻痺の腱切り、経口摂取にこだわる嚥下障害例の喉頭摘出など、整形外科や耳鼻科の支援を受けながら“外科系リハ医“としてスタートした.また内視鏡医・向島 偕先生の協力を得て秋田県内でも相当早く胃瘻造設を開始した.一定期間大学リハ部・中村隆一教授の元で研修を受け、県立リハセンに勤務してからは大学同門の千田富義先生の指導を受けオーソドックスなリハ診療を実践してきた.そして医師会病院に赴任して以後、院内同僚の先生の知恵と知識に学びながら当院に合ったリハ医療を展開してきている.その自己満足度は高い.しかし困ったことに午前中の外来診療が昼を過ぎても終わらなくなってしまった.低血糖と同僚外来看護師さんの迷惑にはらはらしながら今日に至っている.

(本稿は2026年1月、秋田県医師会報NO.1644 『新春随想号』に掲載した)


 

2025年7月21日月曜日

[IS-REC/ISSUES]~老熟~

 ●黒井千次「老い」のエッセイ



 2005年から読売新聞に連載された黒井千次の「老い」に関するエッセイ集、第3冊目に当たる「老いのゆくえ」(中公新書)が柄谷行人の書評で某新聞に掲載された.興味をそそられて早速本書を購入した.「老いのゆくえ」は80代半ばの黒井が、「老い」のさまざまを自身の体験をもとに綴っている.このエッセイ集シリーズ第1冊目は著者70代半ばのものである.自分の年齢に近い記述を期待してこのエッセイ集「老いのかたち」も合わせて購入した.著者の「老い」の歴史的・哲学的考察はさておいて、印象に残った言葉は今風の「老い」を遠ざける健康志向や抗老化思考の対極にある「老熟」という言葉である.生物的年齢に則して高齢者の社会的役割や所為、立ち位置が変わり、昔であれば隠居、近代であれば「定年」がやって来る.こういった時期には社会の一線から離れ、慎ましくも時間的ゆとりを得て小旅行や散策、釣りなど趣味三昧の生活か、孫と戯れる生活である.「老い」の連作で描かれるさまざまな身体・認知能力の低下があっても、時間的・経済的ゆとりがあればその一つ一つを自他ともに受け入れながら「老い」を迎える事が出来るだろう.それが「老熟」である.


●「時の記念日」セイコウの時間意識調査

 6月10日の時の記念日に合わせて時計のセイコウが時間意識調査を毎年行っている(セイコウ時間白書2024、https://www.seiko.co.jp/csr/stda/archive/2024/detail.html).現代人の多くは「タイパは社会に定着」し、「行動はタイパを意識し、無駄な時間を過ごしたくない」と考えている結果である.無論「コスパ」も大切である.「時間が制限された方ががんばれる」「スマホなしで考えるのは5分以内、考えるより検索」で、まさにいつのまにか自分自身もそういった時間感覚に毒されているのに気づく.この調査結果は若い世代ほど高い割合であるが、その一つ一つの数値をみると世代差によらず総じて高い傾向であった.


●タイパ・コスパとエイジレスを求めれる医療・介護職

 人口減少と少子高齢化で地域のスーパーや飲食業、公共交通機関などが立ち行かなくなり地域社会の機能縮少が進んでいる.青壮年労働人口が減って社会を支える労働者不足も深刻である.医療・介護の現場も例外ではなく、利用者(患者)の減少に加えて医師・看護師・介護職の欠員・減少から県内医療・介護施設の倒産や大幅赤字が報じられている.一方、医師一人の充足で経営が改善した公的医療機関の例も報道されている.現状、高齢者を対象とする医療・介護現場ではその担い手である医師・看護師・介護職というエッセッシャルワーカーが確保される限り当面の経営は成り立っている.しかし医療・介護現場の人手不足で職員は仕事上のタイパ・コスパを求められ、特に高齢化した職員も年齢にお構いないエイジレスな役割を求められている.この心身の負担は大きい.結果は利用者である患者にも大きく影響している.施設での経管栄養は1日2回で回されている.必要栄養量や水分量補給を考えると、回数・量とも1日2回は非生理的であり、1回量が多くなった結果、誤嚥リスクも増大する.しかし対応する職員数が限られ、解決策は今のところ見当たらないようである.


●老熟への夢想

 医者となってずっと時間的に目一杯な生活を送り、それは以前ほどではないが今も続いている.結果として家庭での役割を十分果たせず、家族にも負担を強いてきた.“定年となり、仕事が一段落したら、またドイツ・オーストリアをゆっくりバスや電車で回ろう”、“行ったことのない国内各地も旅行したいな”、“以前は自宅で犬を飼っていた.今度は少し大型犬を飼って毎日散歩したいな”、などと妻と話したり想像したりする.しかし未だその実現の目処は立っていない.そしてその目処が立たないうちに、ある日気づいてみると心身ままならない、“要介護老人・寝たきり老人”となっている自分がこわい.毎日そういったたくさんの実例をみながら、老熟の心境とささやかな夢の実現を夢想している.

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付記:

1.引用した黒井千次「老い」シリース第3冊目「老いのゆくえ」のあと、4冊目に当たる「老いの深み」(2024年5月刊)が出版されている.

2.本稿は2025年7月15日、由利本荘医師会報NO.613号記事『銷夏随想』に掲載した




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2025年2月28日金曜日

[IS-REC/ISSUES]~看護学校で教えて~

○看護学校で教える

 リハビリ科を唯一標榜して臨床する医者が少ないせいなのだろう、医師会看護学校で「リハビリテーション看護」(以下、「リハビリ看護」)を教える役回りが巡ってきてしまった。リハビリ臨床の中身は、私自身がリハビリ医者になった頃、ちょうど理学診療科の名称がなくなりリハビリテーション科標榜が認められるようになった30数年前と比較するとずいぶん様変わりしてしまった。当時は中村隆一教授の『入門リハビリテーション医学』(医歯薬出版)、や上田 敏先生の『目でみるリハビリテーション医学』(東大出版会)が私のバイブルであった。これらの教科書に書かれた機能回復が目標の臨床医学は無論昨今でもリハビリ臨床の根幹である。しかし今のリハビリ現場で求められるところは大きく変貌してしまっている。

○「リハビリ看護」教育で期待されるもの

 私の担当する「リハビリ看護」には、346頁の大部な教科書(「系統看護学講座別巻『リハビリテーション看護』」医学書院)があって、これが学生には、タブレットPCに丸ごとインストールされている。相当以前にPTとOT学生対象にリハビリ医学の講義をした経験はあるが、看護と名のつく教育に携わるのは初めて。そこでこの教科書を読み、これを自分なりに再消化するため『目でみるリハ・・』にも再度目を通した(中村著『入門リハ・・』は紛失して参照不可であった)。教科書を読み込むのは大変だったが、私の考えるリハビリ臨床に共通する点も多く結構楽しく最後まで読み通すことが出来た。教科書にはリハビリ看護の対象、法制度、ステージ別看護、基盤となる考え方、対象疾患とその機能障害、これからのリハビリ看護、が項目順でならび、疾患と機能障害ではアセスメント手段としてWHOの国際生活機能分類(ICF)の考え方が根本に据えられている。ここでいうアセスメントという言葉はこれまで臨床医学ではあまり用いられてこなかった。疾患や障害の診断のみならず、対象患者が持つICFでいう個人因子・環境因子を含めて評価する意味合いがアセスメントに込められている。そして教科書に記載され、教育目標として強調される点は、医師を含む関連職種との協業・チームアプローチで対象を捉えること、特に看護師は対象患者とその家族に最も接する機会の多い職種として他職種と患者・家族との仲立ちをする役割、患者ニーズを捉えてチームに問題提起する役割を育てようとしている。

○リハビリ科として日常心がける患者ニーズに答える臨床

 リハビリ臨床はまさにチーム医療であり、医者一人がいてもどうにもならない。各専門職種がその持てる力を最大限発揮できるようにチームをまとめていく、それがリハビリ医者の仕事である。その仕事のバックボーンは、障害医学の診断技法と治療法を身につけ、「リハビリ看護」教科書に書かれたアセスメントが適切に出来ることである。具体的には実臨床で最も多い超高齢患者の抱える問題、すなわち疾病・障害発生以前から存在する栄養障害やフレイル・ロコモ・サルコペニアの問題、認知機能低下の問題、心不全や呼吸器疾患、生活習慣病などによる疾患や障害重複の問題など、さまざまな問題を整理し対処すること、またその生活環境(ケア体制を考慮した退院先)にも配慮してゴールを設定することである。これは患者の欲する心身や生活ニーズを念頭に、そのQOL向上をめざす臨床である。

○「リハビリ看護」で教えたこと

 「リハビリ看護」と現在のリハビリ臨床には共通点の多い事がわかった。当然であるが「リハビリ看護」教科書の主体(主語)は看護師であり、チーム医療の中でも看護師のリードが強調されている。また疾患や障害の評価も本来ほかの専門職種に委ねるべきものも看護師の評価手段として記載されている。そのあたりは誤解がないように、チームでは医師中心のラインが大切なこと(リハ医学の教科書では、“ラインとスタッフィング”として強調される)、評価はチームとしてその結果を共有して、対処を考えることが大切なことを教えた。

○これからの患者ニーズに答える病院の仕事は“ケアミックス型地域包括チーム医療”

 人口減少が進み、医療の規模縮小と集約化が喫緊の課題である。医療に従事するスタッフ自体の高齢化や看護師を含むなり手の不足も問題である。今後の地域包括ケア体制の中で病院の役割は、“ケアミックス型地域包括チーム医療”であることに異論はないだろう。その一員として期待される看護師の継続的確保も重要である。国試合格率100%の医師会看護学校を存続させるためにも優秀な学生を輩出し続けられるように微力ながら応援していきたいと考えている。

(本稿は2025年3月1日、由利本荘医師会報NO.609の連載記事『いいたい放題』に掲載した)


2025年1月10日金曜日

[IS-REC/ISSUES]『未就学児対応の外来ST』~発達障害~

  外来で扱う未就学児のうち、機能性構音障害は、5歳児健診で指摘され就学までの一定期間の指導で改善・治癒する場合が多いと述べた。これに対して言語発達遅滞・自閉スペクトラム症(ASD)などと診断される発達障害のケースは、訓練期間が長く、完全な治癒をめざすものではなく、社会生活・学校生活を送る上での折り合いを付けることに主眼をおいた指導をする。前回は当院において未就学児の認定ST(言語発達障害領域)による外来診療活動を外観した。今回は発達障害の事例を紹介し、それらを医学モデル(発達神経学の裏付け)と社会モデルの立場から振り返り、特に後者に連動する「ニューロダイバーシティー」の考え方に触れる。

●事例1:4歳男児. 診断「言語発達遅滞」

 言葉の遅れを主訴に市内小児科から紹介された。言語面の初回評価では、2語連鎖の受容、3語連鎖の一部表出が可能。動作性課題で、図形弁別10種、積み木構成、縦横の描線が可能。観察では、単語レベルの表出が多く、会話はオウム返しとなる。行動面に衝動性なく着席動作が可能。視線注視が可能で他者への関心もある。2語文レベルの表出・理解の向上を目標に課題を反復した。その結果、5歳9カ月時評価では、身近な関心事に文章レベルの自発話が増え、会話でのオウム返しは消失した。しかし話題が変わり関心事から逸れると会話は困難で、自信なく無言で通す事が依然みられた。一方で言葉を介さないコミュニケーションで他者と関わる事が増えた。

●事例2:2歳3カ月男児. 診断「言語発達遅滞」

   有意味語表出なく市保健センターを介し紹介された。受診時、喃語含む表出はまったく訊かれず。簡単な口頭指示理解も困難で、事物の操作のみ対応する。手元の図形弁別や積み木が可能。線や円の描出はST指示で困難だが、家で母親の指示で描けることがある。訓練開始当初の評価では自発的表出が身振りを含めてなく、要求時のみ大人の手を使う“クレーン現象”で行った。視線を合わせた会話は困難。行動面の衝動性を認めないが、着席などは促しに大きく抵抗する。コミュニケーション面では、待っていると視線を合わせるが不定で顔を近づけ声かけすると無意味声をあげて相手の顔を叩こうとする。遊びも一人で行う。その後の訓練は他者との関わりを楽しく行うように誘導する課題を設定した。時間を要したが6歳6カ月で時点では、文章レベルの自発話が可能となり、会話が成立し、行動面で時間中継続して学習でき、他者と楽しく交わる事が可能となって目標達成・訓練終了となった。

●事例3:3歳女児.  診断「自閉スペクトラム症」

  行動面・コミュニケーション面での評価・訓練継続のため小児療育センターから紹介された。受診時、有意味語の表出なく、口頭指示理解不能。簡単な物品操作可能。図形の弁別や積み木重ねが可能。描線は誘導や模倣でも困難。初回訓練時、表出は単音のみで喃語や身振りでの表出もない。呼びかけに応答せず会話できない。行動面で動きが多く同席の母親に抱きつき、要求が通らないと床に寝ころがり抵抗し、着席は困難。コミュニケーションで視線を合わせず、遊びは一人で部屋の隅から隅を走り回り、玩具を手にせず他者への関わりは拒否的である。その後の訓練方針は他者の存在を理解し、関わる事の楽しさを主眼に訓練を継続した。訓練開始9カ月目には明瞭な有意味語を認めないが、それらしい発語や状況に応じた身振りが視線を合わせて可能となった。会話継続は困難なままで改善なし。一方、着席動作ができるようになり、意志に沿わない事で床に転がる事はなくなった。

●症状・障害はどうとらえられているか?

 症状・障害を診断する基礎となるICD-10、 DSM-IV分類では、心理的発達障害と行動・情緒の発達障害に大きく二分されている。日常、他とのコミュニケーション障害は、心理的発達障害に含まれ、構音器官によらない言葉の表出・理解、言葉を繰る能力の障害である。また読字・書字・算数の学習障害や運動機能の発達障害(発達性協調運動症、DCD)が知られている。さらに自閉症(ASD)などを含む広汎性発達障害が同じグループに入る。後者の行動および情緒の障害には、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、選択性緘黙症(場面緘黙症)などが記載されている。

●発達障害の神経基盤*

 神経ネットワーク発達過程でのシナプス“刈り込み”遅延や未成熟が原因である。脳の正常発達には内部の神経回路ネットワークの発達が必要で、その発達を終えるのに20年程度要するとされる。脳の働きが特化する過程は、個人差と生育環境の影響があり、心理的発達障害はこのネットワークの異常で説明され、中枢性統合の障害(「木を見て森をみない」)や感覚過敏や鈍麻・共感覚などの日常生活に影響する症状を生じる。したがってその正常化には時間と教育上の様々な配慮が必要となってくる。行動・情緒の発達障害の代表であるADHDは、脳全体の時間リズムの切り換え不全の結果と考えられている。

●コミュニケーションに関する発達障害とニューロダイバーシティー**

 発達の遅れ(≒神経ネットワーク発達の遅れ)によるコミュニケーションの障害を、“能力の欠如”として捉えるか、個人の特性や多様性と捉えるかで治療者の関わり方が決まってくる。事例1~3では、受診・訓練開始時期、障害の重症度はさまざまで、再評価や終了時に“普通や正常”に届いていない点もある。しかし訓練場面では遅れを要素分解しステップバイステップに指導し、時間を要しても場を重ねる毎に外来担当STと患児のコミュニケーションは改善している。患児の示す特性の周囲理解も進めばインクルーシブな就学も可能となる。医療の基本が患者の自然治癒力を促すものであるように、外来ST場面で対応する発達障害の基本も障害治療というより患児の特性や多様性を理解尊重した「ニューロダイバーシティー」の視点からその特性を活かした学習を促し援助してゆく取り組みと考えられる。

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*:Newton2024年11月号「発達障害の脳科学」

**:ニューロダイバーシティーの推進について(経済産業省)


(本稿は2025年1月、秋田医報NO.1632「新春随想」に掲載した)




2025年1月1日水曜日

[IS-REC/ISSUES]~認知症が気になる・・

 ●親友K君が認知症専門書を出版

 親友K君はほぼ毎日のように診察室や往診先での出来事をエッセイ風にフェイスブック(Fb)にまとめている。日常臨床を手抜きなく行い、また新医協代表という要職に着きながら、まさに超人的に仕事をこなしているようだ。外来や往診で見聞きしたり体験したことを個人情報に注意しながら書き続けるのは、自身の経験からも容易ではない。まだこの本が手元にないのは残念だが、そういった苦労の結晶が、この認知症に関した一冊である。

今田隆一 (著), 阿部育実 (著), 𠮷田真理 (著)『認知症が気になるあなたへ──診察室から見たその備え』(新日本出版社、2024/11/23)

アマゾンの紹介記事には、「第一線の医師、看護師、社会福祉士が、病気の原因や特徴をふまえ、治療とケアのあり方、予防を解説します。・・事例も豊富で役立つ制度のガイドもあります。」とある。この本を手に取るのが楽しみだ。

●身近な認知症患者さんとリハビリ

 私自身も認知症のある高齢患者さんを入院や外来で毎日診察する。それは当初、認知症以外の身体疾患が原因でリハビリ科に関わった患者さん達である。そういった患者さん故からか、時に話を聞いていて、認知機能低下からくる話の堂々巡りについ声を荒らげてしまうことがある。またリハビリを通じて一定の信頼関係ができると、担当医を聞き役に止め処なく話を続け、時間に追われる身をイライラさせることもある。認知症の陰性症状や逆に陽性症状が強くなるともう対応が困難だ。認知症自体に対するリハビリは発症の早い時期であれば認知機能を改善させるさまざまな方法もある。一見関係がなさそうな身体的動作訓練やADL訓練が症状改善に有効とされる。精神科リハビリでよく行われるロールプレイを含む生活機能訓練も有効である。日常生活や職場での認知機能低下を補う手段として、記憶ノートやアラーム設定できるスマホの活用、生活場所に必要情報を張り出すなど、さまざまな補助的手段の導入を提案することもある。

●認知症になった夢

 認知症は一定水準以下の記憶検査成績や、日常の記憶力低下、物忘れの自覚だけで診断はできない。記憶であれば食事などの日常イベントそのものを忘れる場合である。そういった自身の経験はないが、ある日、学会発表のために首にネクタイを巻こうとして何度やってもうまく巻けずに焦る自分の夢をみてしまった。そして、“これは認知症の症状だ”と確信し暗然とする夢だ。認知症になった自分が夢に出るのは、やはり認知症になる自分が恐いのだ。

●認知症リスクと私の認知症対策

 最近の新聞記事(2024/11/20付け朝日新聞アピタル「認知症に14のリスク要因」)には、英国医学雑誌専門委の報告を引用して、”(14)すべてのリスクを取り除けば(認知症は)45%予防可能“と書いている。その14のリスクとは若齢期から中年期、高齢期と人生の時期により異なっている。若齢期の教育の不足、中年期の様々な生活習慣やそれに起因する罹病、高齢期の社会的孤立や大気汚染、未治療の視力低下が項目として挙げられている。それぞれ項目の重みは異なるが、多少認知症診療に関わる者として、また高齢期にある自身の体験としてこの14リスクは宜(むべ)なるかなである。特に自身の問題として気になのは情報の窓口、感覚器の機能低下である。視力低下や聴力低下(難聴)がそれで、特に最近進んできた緑内障による視力低下を気にしている。視力が低下すると、患者さんの顔など仕事で遭遇する他人の印象(顔の認知)を1回でできなくなる。さらに書類を読む折、その書面全体を一塊で短時間把握することができない、などの影響がある。また生活上の自覚はなかったが、職場健診で聴力低下を指摘され唖然とした。聴力低下には思い当たることがあった。長時間イヤホンを利用することだ。ウォーキングや交通移動時にイヤホンを常用する。調べると、“イヤホン難聴”という言葉があり、その対策としてイヤホン利用は1時間を限度、ノイズキャンセリングイヤホンを使用することとしている。そしてイヤホン使用に限らず環境音の音量を含め、身近なは音のレベルは60db程度までで70dbを超えないように注意している。認知症リスクの多くは若齢期から中年期の成育や生活環境に関わっており、現在まさに高齢期にある自分にできる認知症対策は限られている。新聞記事にあるように、しっかり持病や生活習慣病の管理をし、加えて“脳へのダメージ”を減らし、身体運動で体も脳も鍛え続けることが肝要である。また認知症リハビリで有効性が高い、記憶力低下の積極的代償手段(スマホやスマートウオッチのメモ機能やアラーム機能)導入で同僚や患者さんに迷惑をかけずスムーズに日常業務をこなすことも職業人として必要だと思っている。

(本稿は2025年1月、由利本荘医師会報NO.607(202501号)『新春随想』に掲載した)


2024年8月18日日曜日

[IS-REC/ISSUES]~リハビリと自動車運転評価~

 ●高齢者の自動車運転

 自動車運転免許更新時に75歳以上高齢者の認知症検査が義務づけられ7年が経過した。検査の結果、免許更新ができなかったり自主返納するケースも増えてきている。運転操作ミスなどで死亡を含む大事故が跡を絶たないが、車の構造上の進歩もあり、いずれAIによる自動運転でこういった問題も解決するだろう。

●リハビリ入院患者さんの自動車運転

 脳卒中などでリハビリを受け、基本動作や日常生活活動が自立に近いと、年齢に関わりなく日常生活に欠かせない手段として自動車運転を希望する患者は多い。現状では高齢者に限らず、脳損傷により多少とも身体や認知行動に影響を受けると発症前同様に運転が可能かどうかを医学的立場から評価する必要が生じてくる。特に高齢患者では加齢や元々の骨関節疾患に伴う動作全般の障害があり、自動車運転を続けるには様々なハードルが横たわっている。リハビリ入院中に身体や認知機能の障害は日常生活上の能力として繰り返し評価される。自動車運転はそれと共通した能力に加え、さらに脳の統合的能力が要求される。脳の統合的機能とは大脳連合野機能としての高次脳機能、そのうち認知と運動を結び行動の指令的役割を果たす前頭連合野機能である。

●自動車運転に必要なスキルとメンタルの評価

 必要検査として自動車運転の身体的スキルの評価は理解しやすいだろう。患者は障害発生まで日常的に運転していた場合が大半であるから五感を含む新たな障害がなければ両手両足を使った運転操作に支障ないはずである。手足の麻痺が残った場合には車への乗降、ハンドルやブレーキ、クラッチ操作などで支障があり、これらを解決するか補助する車の改造が必要である。予め対麻痺用や片麻痺麻痺用に改造され、さらに本人が使用する車椅子積載を片手で簡単にできる構造の既製車も売られている。障害と車の構造的問題が解決しても次に操縦上の問題として、反応時間が上ってくる。ブレーキは一定時間内に踏み替えと踏み込む操作が要求される(通常は0.7秒程度)。次いで注意力。注意にはさまざまな側面があり、視覚的注意・配分的注意などが評価される。注意は、高次脳のうち前頭(連合野)機能と関わり、机上検査として、Stroopテストやかなひろいテスト、TMT(A&B)などが行われる。自動車運転評価の多くは、後2者で評価される。TMT(A&B)は、注意の持続と選択を視覚的探索、視覚と手の運動協調の面から評価する。テストAはランダムな25個の数字を線で順に結ぶ。テストBでは数字と仮名を交互に数の昇順、五十音順で結んでゆく。いずれも完成までの時間、誤反応の有無を評価する。図はその実際例である。本例のテストBでは完成に要した時間も誤反応数も多く注意力の低下があると判断される。

TMT(A&B)評価結果の例

自動車模擬運転


●経験例から

 相当以前の話だが前交通動脈瘤破裂くも膜下出血の若い患者でメンタルを含む脳機能障害の回復良く、てんかんのエピソードもない例を経験した。特に本人や家族から自動車運転の是非について相談なく、私自身も指導・アドバイスの必要性を失念していた。自宅退院数カ月後、自動車運転中の自損事故で死亡したことを新聞で知り、呆然とした。現在はリハビリ医療機関と運転免許センターの密な連携があり、このような痛ましい事例はないと確信する。他方、秋田県のような広域で交通不便な環境で生活するには自家用車は生活必需品であり、特に自営業に戻る場合には仕事上も車運転が是非とも必要である。したがって退院時には運転希望の有無、運転可否について必ず確認・評価・指導する必要がある。

○自験例1(KT65歳男性):自営業。仕事上、秋田と実家のある由利本荘を頻繁に往復する必要があり、自家用運転を希望された。右内頚動脈血栓性閉塞で急性期再開通療法が成功した。しかし右半球前方域のまだら梗塞が発生したため、軽度左片麻痺と前頭葉機能障害が残りリハビリを行った。入院中に麻痺はほぼ消失した。記憶検査は正常だが、易怒的で判断力・注意力に難があり、大仙市協和の県立リハセンで自動車模擬運転評価を行った。模擬運転では状況に応じた運転が可能であったが、机上検査で全般的注意力の低下、瞬時視や移動視で左視野に見落としがあり、結果は運転不可とされた。しかしその半年後の再検査では合格となり、保留中の運転免許更新と自家用運転が可能となった。

○自験例2(SK78歳男性):10数年来の右脳血栓で左片麻痺を後遺する。廃棄物処理業自営で自家用運転も普通にこなしていた。しかしここ数カ月前から物忘れがあり、また軽微な自損事故が目立つようになった。MRI画像のフォローアップで左放線冠に新たなラクナ梗塞を発見した。自覚的に障害が悪化した意識はなく、仕事上も自家用運転が必要なため、家族や主治医の免許返上のアドバイスは受け入れ難いようであった。リハセンで自動車模擬運転評価を行った。その結果、模擬運転や机上検査で失点が目立ち、この検査結果から本人もようやく免許返上に応じてくれた。

●高齢者・障害者など移動手段弱者の問題

 障害者に対する運賃割引精度に始まり、2000年の交通バリアフリー法で公共交通機関利用時の物理的障害の一部は解決した。しかし過疎化が進んで生活に必要な公共交通手段自体が乏しくなった。高齢者や障害者はますます遠くへの移動が困難となってきている。障害の程度や有無に関わらず誰もが自由に移動できる手段が必要である。しかし目下のところ、コストに見合う有効な解決策は見当たらない。時間がかかっても一度外出したらワンストップで用を足せる町づくり、コンパクトシティー化の環境整備が必要である。また生活や仕事にどうしても車が必要な場合には、もはや夢ではない段階まで技術が進んできたAIによる危険回避・自動運転可能な構造の自家用車普及が待たれている。

(本稿は2024年8月、由利本荘医師会報NO.602「いいたい放題」に掲載した)






2024年8月17日土曜日

[IS-REC/ISSUES]未就学児対応の外来ST』~これまでの診療活動~

 ●未就学児童のコミュニケーション障害

 現職場に勤務以来、リハ医として児童のコミュニケーション障害を診るようになった。数年前からいくつか関連する書籍を漁り、その中で自分に一番役立ったのが平岩幹夫先生の教科書であった。この書籍については自身のブログ読書録で以前に紹介した(脚注)。さて当院リハ科には県内唯一の認定言語聴覚士(言語発達障害領域)の資格を持つMさんが勤務しており、彼女を頼ってたくさんのケースが紹介されてくる。今回そのようなケースで、オーダリングシステム稼働後の330例を分析したのでその結果の一部を紹介したい。

●紹介元・紹介時年齢・診断病型(図1~3)

 対象330例の紹介元をみると(図1)、Mさん自身も一部関わる由利本荘市とにかほ市の相談健診の場で該当する児がピックアップされてくることが最も多い(177名・54%)。次いで秋田県立医療療育センター小児科からの紹介84名(25%)、市内などの小児科から紹介43名(13%)、そのほかに巡回相談や就学前健診を機に紹介される場合もある。紹介時の年齢をみると(図2)、1歳6カ月から就学直前の6歳11カ月に分布し、5歳児が最も多い。診断病型(図3)は外来STを行う診療報酬との兼ね合いもあり、必ずしも厳密ではない。機能性構音障害が最も多く、192名・58%、言語発達遅滞110名・34%、自閉症・自閉スペクトラム症(ASD)23名・7%、その他5名・2%である。
図1. 紹介元

図2.当院初診時の年齢分布

図3.病型一覧


●病型ごとの特徴と訓練終了時評価(表)

 機能性構音障害は生後、正しい発音が身についていないための構音障害で、口蓋裂など口腔の器質的異常を伴わない場合、適切な指導と訓練で治癒に至るケースが大半である。また器質的異常があっても適切な治療を受けた後の予後は同等である。機能性構音障害192名中164名・85%が治癒、就学前指導としての目標達成が13名・7%であった。言語発達遅滞は県立医療療育センターで診断されたものが多く、該当110名の訓練期間は機能性構音障害より平均1年長く、終了時評価の治癒と目標達成合わせた数は65名・60%であった。ASDもそのタイプや障害要素も様々だが、該当23名の平均訓練期間は言語発達遅滞より長く平均1年10カ月、終了時評価で就学に対する目標達成は14名・61%であった。
表:病型区分と訓練予後

●機能性構音障害

 ある音の発音が正しくできない状態があると、単語レベルから意図した内容が伝わらず家庭や保育園でのコミュニケーシがうまくゆかず何らかの対応が必要となる。そして3歳児や5歳児健診で指摘され小児科医院などに相談が寄せられる。これらは生後、正しい発音が未獲得の構音障害で、機能性構音障害と診断され、“ハビリテーション”(“リハビリ”ではない)が行われ当院外来STでも最も多い。誤りのタイプには子音の省略(sa,ta,ka→a)・子音の置換(ka,sa,si→ta.ta,chi)が多く、音の歪みや付加などもある。これらは訓練開始前後に行う知能を含めたさまざまな検査で予後を図りながら訓練プランが立てられる。誤りのタイプに沿ったプログラムはあるが、児童の発達や障害の程度に合わせて個別的訓練メニューが決まってゆく。訓練予後は最も良い病型である。

●言語発達遅滞とASD

 2022年の文部科学省調査では通常学級で「発達のでこぼこ」のある子が約8.8%(小学生のみで10.4%)を占めるという。病気ではなく、その子が折り合いを付けていく「特性」((京都教育大教授・小谷裕実)と考える。機能性構音障害は治癒に至るケースが多い。一方、言語発達のでこぼこでは言葉自体の発達が遅れ、緘黙状態であったり表出があっても単語レベルで幼児語に留まっていたりすることがある。相手の言葉の聴理解も遅れるている事が多い。訓練開始に合わせた観察や評価で言葉以外も含めた発達のでこぼこを見つけて個別プログラムを立てる。言葉の表出・理解、書き取り、事物操作、などを遊びの要素を交えながら進める。時間を要するが就学前に支援目標に半数以上が達している。さて、自閉症・自閉スペクトラム症(ASD)の診断例が増え、当院外来STへの依頼も増加している。言葉が出にくい、落ち着きなく動き回る、視線を合わせられない、他の子供と遊べない、等の言葉以外の症状も目立つのがその典型例である。ASDは外来STでの包括的支援のみで困難だが、担当STはその子の特徴や発達の度合いを総合的にみて対応を検討する。言葉が出せなくても人と関わる力をつけると意欲が出て生活力がつき課題のおおまかな改善が図られて指導目標達成に至る事が多い。無理に話させるとかえって失敗するので言葉によるコミュニケーションにこだわらないように親や学校にアドバイスする。比較的短期間で外来STが終了する場合があるのはこのためである。

●地域完結型医療として

 総合病院より専門病院、一病院完結型から地域完結型病院へと舵が切られている。リハビリの中でも小児に十分対応できる施設は限られており、特に精神・身体面、言語コミュニケーションに関わる小児発達障害を扱える施設は秋田県に限らず非常に数少ない現状である。当院では専門性高い分野の資格と知識・経験を持つSTが常駐する。当院リハ科外来で小児コミュニケーション障害も取り扱い可能であることを是非知っていただきたい次第である。

---------(脚注)-----------
https://akitanoichirosayama.blogspot.com/2018/04/is-recbook.html

(本稿は2024年8月、秋田医報NO.1627「銷夏随想」に掲載した)




2024年1月7日日曜日

IS-REC/ISSUES]嚥下障害と胃瘻造設

●当地域と当院の現状

  秋田県の高齢化と人口減少が進んでいる。最近、秋田市の人口総数が自然減で30万を割った事が報じられた。由利本荘地域では、2021年~2023年の2年間で由利本荘市7.5→7.18万人、にかほ市2.5→2.27万人と5000人以上の自然減がみられ、また超高齢化も進んでいる。要介護者や要介護者に占める認知症高齢者も多く、由利本荘市の統計では、2022年12現在で要介護認定5695人、集計時期は多少ずれるが、2023年7月までの要介護者認知症判定3528人で6割程度の要介護者が認知機能低下を合併している。この要介護認定に前後してリハビリを含む入院治療が当院に期待されている。入院目的はさまざまだが、急性疾患や外傷・骨折などで寝たきり、在宅生活が困難となって、その後の社会生活の道筋をつけること、入院治療・リハビリに多少なりとも介護やケアの軽減を期待されたものである。他方、全身状態が不良か、若しくは老衰状態で看取り目的の入院となるケースも半数以上を占めている。一月当たりでみると、死亡を含む退院患者が入院を上回る出超の月も多い。看取り以外の入院患者では紹介もとからの治療継続とともに、寝たきりによる廃用とその予防を目的に身体リハビリが行われる。また嚥下機能低下による栄養失調や誤嚥性肺炎治療後の栄養改善、嚥下評価・リハビリ目的の入院も多くなっている。

●嚥下障害入院の現状

 2022年10月から2023年10月末までの13カ月間に、嚥下障害・嚥下困難(ICD10でR13)の診断で入院対応した延べ総数は、入院総数465名中、67名(14.4%)であった。うち当院併設の介護医療院入所を含む入院ないし療養中は19名。現時点での転帰は死亡22名(33%)、経鼻胃管17名(25%)、嚥下調整食による経口摂取回復15名(22%)、胃瘻造設(PEG)9名(13%)、静脈栄養4名(6%)であった。嚥下障害患者は原則、嚥下評価として嚥下内視鏡(VE)、可能であれば嚥下造影(VF)を行うが主治医の判断で嚥下評価う行わない場合もある。胃瘻造設を行った例は全例、造設前にVEを行い、PEG後の栄養改善で車椅子座位がとれるようになったケースでは、VFを実施して気晴らし的となるが安全に経口摂取可能な食材・食種や食形態を検討している。認知機能が低下して経口摂取を拒否したり望まなかったりするケースはPEG栄養のみとなる。しかし身体機能が改善して座位が可能となり食思のあるケースでは、嚥下評価と造設後の嚥下訓練で何かしらの経口摂取が可能となっている。

●嚥下訓練とPEGの果たす役割

 嚥下障害が脳卒中急性期にみられるケースでは、当初経鼻胃管栄養を行っても、時間経過で十分な経口栄養を取り戻すことが多い。回復の予測は病変の広がりや陳旧性脳病変の有無、発症時年齢で予測可能である。しかし、むせ込みや嗜好の変化、体重減少などの嚥下障害の兆候が認められて数カ月以上経過しているケースでは、紹介時の脳画像で脳萎縮による両側島回の露出、硬膜下水腫、ラクネの多発を認めることが多い。臨床的には偽性球麻痺であり、嚥下障害に加えて構音障害や嗄声があり、認知機能低下を伴っていることが多い。このような場合、経口栄養のみでの生活体力維持は困難と判断される。ある程度の経口摂取が可能で身体機能の著しい低下がないケースでは、嚥下訓練で嚥下調整食(軟食やトロミ食などの嚥下治療食)で退院出来る場合も多い。しかしその後に再び誤嚥を起こすことがあり、その場合、栄養の安全弁にPEGを造設を勧めている。

●嚥下障害の予後

 嚥下障害の原因や発症後の期間、年齢や認知症の有無でその予後はさまざまである。しかし生命や体力維持のために何らかの栄養手段が必要である。重度の認知症や意識障害でない限り、生命維持に必要な栄養を手足を抑制して経鼻胃管や静脈栄養で行うことは患者に苦痛を強いる事になり賛成出来ない。また抑制を良しとしない施設入所も困難である。たとえ高齢であっても、また終末期であっても意識がある限り、苦痛を与えない緩和医療としてPEGは最良の方法であり、PEGは施設での看取りを可能とする有効手段でもあると考えている。

※本稿は、由利本荘医師会報NO.595「2024年新春特集号」“いいたい放題”に掲載した



2022年4月13日水曜日

IS-REC/ISSUES:「いいたい放題」リハビリ科入院からみた障害高齢者の現場~診療報酬改定~

由利本荘医師会報に掲載した記事を投稿します。(由利本荘医師会報NO.574・2022年4月号)

●超高齢化を反映する入退院

 リハビリ科入院(リハビリ目的入院)を語る前に当院の入退院の現状と病床運用について触れる。端的に言えば、入院患者の超高齢化である。看取りや終末期医療対象が増え、在宅復帰ケースが極限られている。現在、病棟は地域のニーズに応えること、病院収入を最大化することを目的に、一般病床(15)・地域包括ケア病床(35)・療養病床(50)・障害者病床(50)で構成される。この機能別病床をさらに効率的に運用するため、患者の病床間ベッド移動を毎日行い、一般病床の稼働ベット数と平均在院日数、地域包括ケア病床の在宅復帰率の最大化、障害者病棟の相当患者割合、療養病棟のADL区分2・3割合の最大化を図っている。

●リハビリ入院の実態

 当院は慢性期病院の主要な柱として、障害高齢者の機能回復・生活機能回復や生活の質向上を目指すリハビリを重視する。過去20カ月間(2020年1月初~2021年8月末)、実際に入院してリハビリを行った患者は総数387名、年齢分布27~98歳、中央値79歳であった。障害の原因をみると、国民生活基礎調査などでは、認知症・脳卒中・衰弱・骨折転倒が4大原因とされるが、当院の同時期の検討では廃用症候群が半数を超えていた。これは、障害が肺炎や心不全、その他の内科疾患・認知症・老化衰弱などで徐々に起こり自立生活が困難となった事を意味している。こういった背景での廃用症候群は、回復に時間を要し、また回復自体が望めない場合が多い。また患者の家族構成をみると、独居83(21%)・夫婦世帯67(17%)・患者と子の二人世帯40(10%)その他197(51%)で、ほぼ当地域の家族構成に一致していた。一般に障害を持つ高齢老人が在宅で過ごすためには、患者本人一人で留守居が可能か、在宅に適宜交替できる複数の介護者がいるかなどが目安となる。患者を含め3人以上の世帯でも患者以外は働きに出ている事が多く日中の介護力には期待できない。世帯構成での条件達成が困難な場合にはデイサービスやショートを適宜利用する。しかし実態をみると、在宅に戻るチャンスのないロングショートが施設利用者の大半を占めていた。

●診療報酬改定のねらいと当院の状況

 この度の診療報酬改定を日本慢性期医療協会・武久洋三会長の説明に基づいて、特に慢性期医療を中心に触れる。それは療養病床・地域包括ケア病床に関わらず、①その医療内容と質のレベルアップ、②栄養・薬剤・リハビリ重視、③質の向上を目指した機能分化・タスクシフト、である。特に①③に関連して、増え続ける高齢者の救急医療に対応する慢性期病院の整備を求めている。救急医療管理加算に該当しない場合でも24時間365日、患者を受け入れよという事である。①では、地域包括ケア病床の在宅からの入退院割合や救急(緊急)入院割合のハードルを高くしている。現状、出口である当院ケア病棟の在宅復帰率20%未満では到底条件をクリアできず、病床数を減らすかすべて返上するかの選択肢しか残されていないようにみえる。療養病床の質向上については栄養とリハビリに関して厳しい規準を要求している。リハビリ医の立場から妥当で既に実施済みの規準もあるが、いずれも診断・評価やカンファランス等で時間をとられ、少ないスタッフでは相当厳しい内容である。ADL改善度のFIM継時評価、またおむつがはずれた割合、IVHや非経口栄養の患者を経口栄養のみに改善させた割合などを規定して加算や減算を行う仕組みを取り入れている。摂食嚥下について言えば超高齢者を対象としたリハビリでは代替栄養と経口栄養の併用がせいぜいの現実的ゴールであり、経口摂取のみに切り換えられるケースは決して多くはない。

●超高齢化の現状に見合う改定なのか?

 現在の秋田県や由利本荘地区の高齢化率は、2045年頃の全国平均に一致する。今回改訂の主旨に沿った質の高い慢性期医療を当面実現可能な病院は当地区以外の全国にはたくさんあるのかもしれない。しかしそれらの“質の高い”慢性期病院が2045年頃も同じ質を維持しながら生き残り続けることは本当に可能なのだろうか?当地区・当院の現状からは到底そうとは思えないのである。


2021年9月12日日曜日

[IS-REC/ISSUES] ~リハビリ科入院からみた寝たきり患者の拘縮

これまで由利本荘医師会報・秋田県医師会報に掲載した記事を順次投稿します。 由利本荘医師会報NO566(2021年9月号)

●拘縮は予防できるか?

        重度片マヒや四肢マヒが残り、結果的に寝たきりとなった患者さんで問題となるのが四肢・体幹の拘縮である。20数年前、頼まれて秋田市内某総合病院の循環器科病棟をリハビリ医の立場でその診察と回診をさせていただいていた。主な役割は何らかの障害を残し、リハビリで良くなるケースあればリハビリ病院へ拾い上げることなのだが、もっとも困ったのは障害発生から時間が経ち四肢の痙性や拘縮が重度となったケースであった。寝たきりに近い状態の患者を病棟看護師は時間で一生懸命体位交換し、確かに臀部や踵の褥瘡は少ない。しかし四肢・体幹の屈曲あるいは伸展拘縮が進んで、股・膝・体幹が折れ曲がりおむつ交換も容易ではなくなっている。また手・手指関節は握り拳状となって指間が開かずそこに褥瘡も発生している。発症の早い時期から拘縮予防のROM(関節可動域訓練)をやっていれば予防できただろうに・・とも当時は考えた。しかし、その後の臨床経験からわかってきた事は拘縮予防ROMは、患者自身にその運動に協調できる自動能力が残り、かつ相当程度の頻度(たとえば毎日数時間かけるような)で実施しない限りほとんど無効であることだ。

●器械で自動・他動ROM訓練を行う

        訓練士によって限られた時間、ROM訓練を行っても拘縮予防が手ごわい事は以前から想像していた。そこで器械で自動・他動ROM訓練を行うことを考えた。幸い開発に手を貸してくれる器械メーカーがあって、まず最も実現可能性のあるマヒ上肢の手・手指関節を空気圧で伸展させる機器を試作した。医療器械としての安全性考慮などメーカー技術者の協力がなければ困難だったが何とか製品・市販まで漕ぎつけた。現在は多くのリハビリ施設や老健施設などで手の拘縮予防機器として使用されている。次いで下肢、特に足関節の尖足予防の機器開発を県立大学工学部の某教授と取り組んだ。しかしこれは結局未完成に終わった。下肢の足底側に押す力は非常に強く、空気圧のみで他動ROMを行うのは困難であり、これを補う硬性素材を使用した場合、医療機器として安全上の問題をクリアできないためであった。

●入院患者の現状と患者QOLを考慮したリハビリ介入の可能性

        当医師会病院の診療目標のひとつは、“慢性期リハビリテーション”である。医学的リハビリの柱の一つは患者さんの機能回復であることは言うまでもない。障害発生の早い時期に急性期病院での治療を終えて紹介され、リハビリのレールに乗り続けられれば、年齢や背景疾患にもよるものの障害を最小限にくい止めて自宅退院や施設入所が可能となる。

しかし障害自体が高度で、かつ背景疾患や合併症を抱える高齢者は機能回復が困難であり、主にケア対象のレベルに留まってしまうのが通例である。ベッド上の動作が要介助で、離床全介助、食事にも介助を要するような場合や静脈栄養、非経口栄養の場合、あるいは気切状態の場合などでは、退院後の受け入れ先がなく、医療リハビリの期限を超えて延々と療養入院を続ける結果となってしまう。そういった機能回復が既に期待できなくなったケースが他院からの紹介を含めて徐々に療養病棟を占めるに至っている。機能回復を期待して積極的リハビリを行っているケースは現在、全病床の3分の1に満たない状態。これは当院リハビリ医療の面からも深刻な状況である。高齢でさまざま合併症を持った入院患者さんの質が今後変わるはずもない。今、漠然と考えるのは従来の機能回復を第一義的に考えるリハビリ医療ばかりではなく、患者QOLを考慮したリハビリ介入の可能性である。ケアの面から考えたボトックスによる痙縮コントロール、そして最も難題である拘縮の予防と改善、認知症に対する取り組み等々。解決すべき課題は、まず口にしたり文字にしたりしないとその道筋すら見えてこない。今は残念ながらまだその課題を挙げて確認する程度の段階に留まっている。

2021年9月2日木曜日

[IS-REC/ISSUES]秋田県の無料広報雑誌「楽園」NO.65(令和3年6月1日)号掲載

 秋田県の無料広報雑誌「楽園」(平成22年~)は、中高年向けの健康記事を掲載しています。冊子は、 県内(銀行、図書館、宿泊施設、協力医療施設)および県外のアンテナショ ツプに設置されています。本稿はその65号(令和3年6月1日号)に掲載されたものです。

『養生のヒント  ~あなたは、“元気老人?”それとも“フレイル?”』


○リハビリ病院の患者さん達

        入院リハビリを受ける、それは日常生活が困難となる何らかの原因があって、急性期治療後も家に帰ることが出来ず、生活機能の回復を図る入院です。入院理由は要介護・寝たきり原因とほぼ共通。その主な原因は、認知症・脳血管疾患・高齢による衰弱・転倒後の骨折などが挙がっています(厚労省2019)。リハビリ入院はその中でも良くなると期待されるケースなので、認知症患者は除外されます。

○リハビリ入院患者に、“元気老人”はいない!

    
        リハビリ入院患者は、“アラエイティー(80歳前後)”で、フレイル、すなわちヤセで低栄養・筋量低下(サルコペニア)・活動量低下、が共通しています。フレイルでは握力が落ち、両下腿が細くなり、低栄養状態で、意欲・体力なく、栄養の改善を図らないとリハビリ実施は困難です。

○フレイルだから要介護や寝たきりとなる!

        一般にフレイルは老化に伴う心身機能低下と考えがちですが、老化の必須プロセスではありません。事実、私たちの身の回りには高齢でもたくさんの“元気老人”がいます。一方、徐々に食が細くなり痩せてきた、外出しなくなった、外出時には信号機のある横断歩道を渡り切れなくなった、などの症状があればフレイルの可能性が高くなります。フレイルになると簡単に骨折する、食事の偏りや低栄養、脱水から脳卒中・心筋梗塞などに罹患する、また認知症を発症する、などの可能性が高くなります。


○フレイルを予防して健康寿命を伸ばそう!

        寿命自体の調整は困難です。しかし細胞や遺伝子レベルで寿命制御機構が発見され、
実験動物から人の長寿化の試みが現実化しつつあります。他方、老化はプロセスであり個体差が大きく、個人の生活習慣に大きく左右されます。老化に抗して健康寿命を延ばしフレイルを予防するには日常の栄養が最も大切。高齢になるほど淡白で粗食を好み、また生活時間が不規則、食事も朝昼兼用、夕食が夜食となる、などのケースがみられます。三食をきっちりとる、魚肉・鶏肉など、蛋白質を多く食べ、副食多く主食は特に夕方に少なめとする、これが基本です。また自分の歯を残すように定期歯科健診を受け咀嚼力、口腔・嚥下機能を維持してオーラルフレイルを予防します。身体運動能力の維持・改善には毎日の運動が必要。朝のラジオ体操、また仲間と一緒に出来る運動などが良いでしょう。ウォーキングは速歩で息がはずみ汗をかく程度の負荷で行います。社会参加の面では、可能な限り就労を続けます。そうでない場合にはボランティア活動、友人とのおしゃべり・会食、または観劇などの文化活動も望ましいことです。これらの点に心がけるのはもちろん大切ですが、生活習慣病で治療を受けている方はかかりつけ医の投薬と指導で治療を中断しないようにしましょう。老化というプロセスからフレイル、サルコペニア、そして認知症を予防して要介護状態に陥らずに、いつまでも元気老人でい続けられるかどうかはあなたにかかっているのです。

2021年8月30日月曜日

[IS-REC/ISSUES]~脳卒中治療・リハビリテーション医療の進歩を活かすために~

 ※これまで由利本荘医師会報・秋田県医師会報に掲載した記事を順次投稿します。 由利本荘医師会報NO492(2015年1月号)

~脳卒中治療・リハビリテーション医療の進歩を活かすために~

●はじめに

        ここ数年、脳卒中治療やそのリハビリは大きく進歩している。今年まもなく「脳卒中治療ガイドライン2015」が公表・出版される。そこでは脳卒中リハビリについても多くの紙面が割かれるはずである。拙文ではその詳細に触れないが、当地区の現状を踏まえ今後その治療と技術の進歩を日常診療に活かすため、当地区全体で何を目指すべきか、その方向性について私見を述べる。

●由利本荘医療圏の現状

        平成24年度の由利本荘保健所管内の死因統計では、死因の多い順にガン・心臓病・脳血管疾患・肺炎・不慮の事故であり、脳卒中割合は死因第3位。また要介護・寝たきりの原因は全国共通し、脳卒中後遺症が第一位。これは当地区でもおそらく同様であると思われ、脳卒中治療とそのリハビリには未だ十分な力を注ぐ必要性を感じている。当医療圏は病院数6、多くは一般病床であり、療養病床は1病院50床のみ。リハビリに特化した病床はない。脳卒中医療やそのリハビリは、急性期から慢性期に区分されたシームレスな地域完結型医療が最も有効とされる。こういった地域の体制について当地区は残念ながら秋田県内でも相当遅れをとっている。一方、近年国の目指す医療と介護の一体化構想のもとで地域包括ケア病棟が生まれつつある。この中には在宅診療支援機能も含まれており、“慢性疾患やそれによる機能低下・生活機能障害(要介護状態)”に対して、有効な対処の枠組みが用意されたかにみえる。

●治療の進歩・リハビリの進歩

        脳卒中急性期治療について、当地区の脳卒中センター機能を担う由利組合総合病院は国内でも屈指の高い医療レベルを誇る。急性期病院でrtPA使用や血管内治療が行われ、引き続き急性期・亜急性期のリハビリが行われる。機能回復を目指すリハビリ、障害が残っても、その障害を代替したり補助的手段を導入して社会や在宅復帰につなげるリハビリ技術は大きく進歩している。身体機能という場合、特に脳卒中では運動麻痺に眼が奪われがちである。しかし近年注目されるのは運動障害治療以前の問題として、栄養障害や認知障害の問題があり、このような背景を改善することで機能予後が大きく変わることも周知の事実である。リハビリそれ自体は、要点として医師やセラピストのスキル(リハビリの質)と、訓練の量が挙げられている。特に後者の量的問題については理解しやすく、“24時間365日リハビリ”の有効性は実際高い。

●地域の実情にあわせて何が用意されるべきか?

        生活圏は広域であり、脳卒中後遺症を抱えて自動車運転が出来なくなると地域生活は“アウト”となる。痙性や拘縮で手の機能が低下するとそれまで可能だった身辺処理が自力で出来なくなる。疾患管理が悪いと脳機能が低下して嚥下障害が起こり誤嚥性肺炎を来す。家屋環境や季節的影響で運動やリハビリが行えないと運動過少による肥満から日常生活活動が困難となることもある。こういった様々な生活上の問題に対して適切な評価と指導(自動車運転であれば“運転シミュレーター”、痙性や拘縮は麻痺上下肢の管理と治療的ブロック療法、嚥下障害であればその評価と食事形態・栄養摂取法の検討、肥満であれば障害にあった運動・訓練法や栄養指導、など)がなされ、必要と適応あれば治療と短期集中リハビリが可能となる専門的施設(“リハビリセンター”)が利用される。それは脳卒中センター同様に地域全体で共有できる“リハビリセンター”でなければならない。そのためには地域で一貫した治療方針で患者さんをみる“地域連携医療”の中で利用される形が望ましい。地域連携医療は医療・介護の担い手個々の協力で可能だが、リハビリセンターなど、“ハコモノ”の設置は容易ではない。しかしリハビリの大きな目的は“要介護者を減らし、要介護度を下げ、tax-payerを増やすこと”。この目的実現で削減できるコストも大きいはずである。“リハビリセンター”の採算性を是非どこかで検討していただきたいものである。

●おわりに

        私個人の当面の目標は地域連携医療の構築で急性期から回復期へ脳卒中治療とリハビリの流れを作ること。そしてその結果を出して行くこと。なかなか大変な課題である。諸兄姉のご支援をお願いして筆を置きたい。


[IS-REC/ISSUES]リハビリ科入院からみた障害高齢者の治療スペクトラム


※これまで由利本荘医師会報・秋田県医師会報に掲載した記事を順次投稿します。
 由利本荘医師会報O550(2020年3月号)

●高齢者リハビリ入院の背景

    巷間の高齢者の多くは元気老人で、“人生100年時代”を謳歌している。一方で少子化による世帯人数減少、高齢者貧困世帯増加を背景に、目立った障害がなくともフレイルという要介護準備状態者が増加している。巷間の高齢者の一方はこのフレイルで、生活習慣病の不十分な治療や未治療、健康維持に必要な食事・栄養・運動習慣の不十分などがその原因となる。フレイルでは高血圧や糖尿病による大小血管病、骨粗鬆症による大腿骨折などをきっかけに、介護を必要とする様々な障害に見舞われる。急性期病院での治療後、“あとはリハビリで”と障害を持つフレイル高齢者が紹介されてくる。また市中の診療所で治療を受けながら徐々に機能が低下し介護が限界に達して紹介されてくる高齢者もある。慢性期医療病院のリハビリ科入院は概ねそのようなフレイル高齢者や既に相当以前から様々な疾病や障害を持った要介護高齢者がほとんど。元気老人が入院してくることはない。

●背景疾患を治療し、“機能的状態”を入院時より良くして帰せるかが問題

        背景疾患の治療を前医に引き継いで行う。新たに発生した障害はそのリスク管理を行いながらリハビリを行う。リハビリでは阻害因子を明らかにし、回復や改善の見通しをスタッフと共有する。その阻害要因が大きければ、時に“リハビリ適応なし”と判断するケースも出る。意識障害や全失語で訓練時の協調動作が期待できないケース、極度の栄養不良で訓練負荷に耐えられないケースなどはリハビリ適応外となる。これらの問題がない場合でも、フレイルや認知症によって、訓練しても機能的状態は変わらないか、悪化するケースがある。主治医の仕事は、したがって背景疾患を治療し、阻害因子の軽減を図り、家族やMSWと相談しながら退院先を決定する、チーム全体の方針の取りまとめを行う、などである。その場合、“患者の機能的状態が入院時より良くなっているか、退院後にその変化が患者本人のQOL改善につながるか?”を絶えず考える必要がある。

●リハビリとケアの境目

        “リハビリ適応外”、“現疾患治療優先でリハビリ困難”と判断されるケースのリハビリ科入院は悩みが多い。訓練で機能維持すら困難なケースもある。家族に状況を説明してケアに重点に置いたメニューを実施する。背景疾患が重症であったり、もともとフレイル高度な患者は、この“リハビリとケアの境目”に位置した治療目標を立てることとなる。

●ACP「人生会議」と 「エンド・オブ・ライフケア」

        「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」、いわゆるACPが提案され、その身近な代替語として「人生会議」が昨年から提唱されている。ACPは、自らが望む「人生の最終段階における医療・ケアの方針」を前もって話し合い、いざその場面となった時に活用しようという当事者中心のもの。一方、ケアを提供する側の指針「エンド・オブ・ライフケア」は、“リハビリ入院治療スペクトラム”の一端も説明しているように思われる。機能回復や改善を図るリハビリ、機能維持を図るリハビリが困難でも医療者として何かできることがあるはず だ。意識が良いのに四肢拘縮進行で苦しむ患者、経鼻胃管挿入のまま四肢の抑制を受けている患者などをみると、“リハビリとケアの境目”の患者でもそのQOL改善を目指す治療やケアがあると確信する。

●リハビリ科入院:これからの課題

        医療全般が進歩した。服薬アドヒアランスを上げるOD錠、ポリファーマシーを避ける合剤、安定した血糖変動が得られる持効型インスリン、などがそれである。リハビリ医学も対象患者の高齢化でその質と内容が少しずつ変化してきている。フレイルとの関連で、“リハビリ栄養”や“障害予防リハビリ”の言葉が生まれた。訓練場面でのロボティクス応用は高齢者リハビリ現場ではやや縁遠いので触れないが、変形拘縮予防のボトックス治療や物療の利用はもっと考慮すべきだろう。また、治療的胃瘻造設は終末期医療に至るまで「緩和ケア」や「エンド・オブ・ライフケア」の観点から有用と確信しており、まだまだそのプロパガンダが必要と思っている。

※医師会報掲載の関連記事は以下の通りです。



2021年8月29日日曜日

[IS-REC/ISSUES]『NO546「私のオススメ」ライフハックとaudible.com』

※これまで由利本荘医師会報・秋田県医師会報に掲載した記事を順次投稿します。 由利本荘医師会報O546(2019年12月号)

~ワークライフバランスの生活手法~

        精神科医・名越康文氏が『寅さん新聞』で語るように、物欲や望まない人との関係性などに煩わされず、また決まったスケジュールを持たない生活ができたらそれは最高の贅沢だろう。私はどう間違ったのか、歳をとるほどそんな贅沢に程遠い時間貧乏の生活を送っている。職場で走り回り、家にはクタクタで帰り、“メシ・フロ・ネル”の生活になりかねない毎日なのである。そこで当面の私の使命は、“時間に流されず、仕事もプライベートも充実した生活を送ること、しかもその“満点”生活を他人(ヒト)には卒なくこなしているようにみせること”、なそある。さて、以前からライフハックには大いに興味があった。ライフハックとは、人生をラクにする“IT時代の仕事術”である。タスク管理から知的生活の設計まで人生をラクに一歩ずつ変えるテクニックである(Lifehacking.jp )。出来るだけ手抜きせず迅速に仕事をこなし、残業などはせず、まっすぐ家に帰って趣味にも時間を使う。その理想をかなえる手段としてライフハックは必須であり、時間貧乏ゆえに日・週・月単位のスケジュールが必要となる。時には明治大学・齋藤 孝先生が披露するようにタイマーをかけて一つ一つの仕事をすることも必要なのだ(齋藤 孝著『人生を変える「習慣」の力』成美文庫)。


私のライフハック1:“ScanSnapとPaperPort”


        加齢とともに仕事をこなす要領が悪くなった。その最も大きい要因は身のこなしが悪くなったことと、言わずもがな記憶力の低下である。脳の記憶容量が減って複数の仕事を同時並行でこなすことができない、記憶を再認することは出来ても、記憶を直接引き出すことが出来ない、具体で呼称できず「あれ、これ・・」の世界なのである。こういった時、脳の記憶容量低下を補う手段がまさにITの力である。私は10数年来その目的で“ScanSnapとPaperPort”を使っている。要は職場であろうが自宅であろうが、記憶ないし心に留め置くことがあればすべて“ScanSnap”でスキャンして画像データベース“PaperPort”に取り込み、保存するのだ。月単位で目的別(日常業務・文献・出来事・趣味など)に作っている4つのフォルダに分類する。このスキャンして保存した文書などは一覧してわかるサイズのサムネイルで表示されるので簡単に探し出すことが出来る。数年以上前に保存した文書も、“everything”というデスクトップ検索ソフトを使えば瞬時に見つけることが可能である。この画像データベースは、“dropbox”に保存してある。その結果、職場や自宅など場所を問わず、ノートPCさえあれば出張先でもアクセス可能である。またPDF や JPEG形式保存なのでiPhoneでも閲覧できる。お蔭で脳の記憶貯蔵庫を開放して、脳を考えることだけに集中出来る。こういった技術・手段はアクセススピードの進歩を別とすれば相当以前から利用されてきた。仕事と趣味の境界必ずしも明瞭ではないが、週末にはゆっくり新聞記事や雑誌記事、文献などを切り抜きして取り込む。記事や文献内容も切り抜きと画像データベース取り込みという作業が入ることで記憶に残りやすくなり、また後日の参照も簡単に可能となる。特定のテーマでまとめて読み返すこともできる。書評の切り抜きはよくする。複数の新聞で書評が掲載される本はやはり買って手にとりたくなり、ついついアマゾンで“ポチッ”とやってしまっている。(組写真1:ScanSnapとPaperPort画面、“everything”による検索)


私のライフハック2:“Yahoo & Googleカレンダーとリマインダー"

職場の日常業務は時間でびっしり埋まる。検査や処置、面談、外来、会議など時間に遅れることなくこなすようにしている。看護師さんなどからその時間前にお呼びがかかり、貴重な数分間を時間泥棒されることも多い。親切心から出でいるものなので怒らないようにしている。この仕事スケジュールは“Yahooカレンダー”、プライベートは、“Googleカレンダー”に分けて入力している。週や月単位のスケジュールは課題としてクラウド上(iCloud)のリメンバーソフト、“リマインダー”に記録する。設定で期日前になるとアラームが出るようになっている。予定の記載などは最近の音声入力の正確度がアップしているので固有名詞を除いてiPhoneからの音声入力で十分事足りている(組写真2:Yahoo & Googleカレンダーとリマインダー )。


“ながら聴き”のaudible.com

自分の趣味と健康を兼ねてウォーキングやジョギング、体操などをする。その時、有料のauidible.comからダウンロードしたさまざまなメディアを“ながら聴き”する。シリーズものでは,吉川英治の「宮本武蔵」、「三国志」、「新・平家物語」、五木寛之「青春の門」など、さまざま長編大作を聴いた。audible.comを知るまでこういった作品を読む機会は死ぬまでないだろうと漠然と考えていたので、「聴き語り」形式ではあるが大作に触れるチャンスのあったことを幸運に思っている。運動しながら耳で聴く本を読むとは、まさに認知症予防のコグニサイズ、いいことずくめのようだ。しかし特に高齢者運動指導時には却ってその問題を指摘する論文(川嶋一成:高齢者運動指導時の留意点~「ながら運動」防止の観点から.日医雑誌148、2019年)もある。実際、私自身もトレッドミル運動など、運動に集中が必要な場合、宮部みゆき・貴志祐介・今野 敏、といったワクワク・ゾクゾクするようで内容的に軽めのホラーやサスペンスでない限り、“ながら聴き”の出来ないことがわかってきた(組写真3:audible.comのメディア案内)。

神はすべての人に等しく1日24時間を与えている。その時間を有効に使えるかどうかは、このIT時代に人間に備わった能力の一部を代替したり、補ったりできそうな機器を上手に使いこなす「ライフハック」力とそれを習慣化することが大切だと思っている。





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