2013年2月3日日曜日

[IS-REC] 櫻井 武『食欲の科学』(講談社ブルーバックス)を読む

 

食欲とは何とも悩ましい


ヒトの基本欲求で最も大切な食欲。肥満や生活習慣病を恐れて食をコントロールしたいと思う者は多い。かく言う私自身も若い頃からの生活習慣で早食い、大食傾向が未だ治らず、今や年齢的にもその是正に悩んでいる。
      櫻井先生の本書は彼の睡眠に関するオレキシン発見物語である『睡眠の科学』(同ブルーバックス、2010年)に続くものであり、前著の出来が良かっただけに、正直なところ、「柳の下の二匹目の泥鰌」をねらったものではないかとあまり期待はしていなかった。しかし新聞書評に動かされて購入し、読んでみるとその中身の濃さに圧倒された。まず食欲の根源的役割として、ホメオスタシスの一つでもある体重恒常性と食欲の関係、その仕組みを支える中枢である視床下部での食中枢について解説している。飢餓と飽食によって食欲が二相性にコントロールされるのであれば話は単純であったはず。しかし食欲調整の仕組みに限らないのだろうが、身体機能コントロールはほんとに複雑だ。

「レプチン発見物語」で話は進む


   たまたま発見された肥満マウス(ob/obマウス)や肥満を呈する糖尿病マウス(db/dbマウス)系列を利用した肥満メカニズムの研究から食欲制御因子が想定され、幾多の苦労と様々な技術の進歩によりながら、1994年それはレプチンとして発見、報告。しかしその働きは当初想定されたほど単純ではなく、レプチン血中濃度上昇で食欲が直接抑制されるものでないことがわかる。適度なレプチン濃度は身体が十分エネルギーを蓄積していることを知らせ、痩せてレプチンレベルが低下すると、強力な食欲を惹起するという。すなわち広い意味での食行動と連動した長いスパンでの働きがレプチンにはあるというのだ

レプチン発見から食欲と食行動の脳内機序が解き明かされた

   

食欲の昂進と抑制、栄養状態という長いスパンはレプチンが情報源となり空腹というより短いスパンでは血糖レベルがその情報を視床下部(弓状束)に伝える。情報に答えるニューロンは様々で、さらに線状体にある側坐核という報酬系にその情報は伝わり、食行動が惹起される。これだけでも複雑だが話はもっと複雑で、なかなかついて行けない。

食欲と食生活

本の後半三分の一が神経性食思不振症や大食症、生活習慣病の話、肥満は遺伝する、肥満者をみていると大食となるなど、エピソディックに語られ、最終章は「食欲に関する日常の疑問」となる。全体バランスを考えた章立てなのだろうが、最後の二章は蛇足に近い。

全体としては食欲に関するサイエンス読み物として読み応えあり

食欲の根元に始まり、レプチン発見から様々な食欲に関わる脳内物質が落とすことなく網羅され、内容は複雑で素人がすべてを理解するのを困難にしている。しかし食欲のサイエンス本としてはしっかりした内容で最後に引用文献も記載され、本書は先生の前著『睡眠の科学』同様に手元に残したい一冊と感じた次第である。



[IS-REC] 2013年1月 私の運動記録から

201301月運動実績

暮れから正月にかけた期間中Fitness Clubが休業することや積雪で屋外散歩がままならないという思いが幸いしたらしい

   オムロン歩数計walking Styleによる運動記録から2013年1月の運動状況を振り返る。1日平均歩数9530歩、しっかり歩数(運動歩行)5200歩、月間歩行距離160㎞以上という予想外の目標を上回る成績だった。特に後半の週はつらい気持ちを押しながらほぼ毎日夜半のfitness Club通いを続けた。

fitness Clubジムでのトレッドミル走行は、軽音楽を聴き流し、その曲数を数えながら時速10㎞以上のペースで走る事としている。耳にする軽音楽10曲以上、15曲を目標に走ると、1時間オーバーとなり、トータル10㎞以上の走行距離となる。オドメーターで距離を確認しながら走ると途中で辞めたくなる誘惑に駆られるので、曲を数えて走るこの方法が私に合っているようだ。

   2月は28日と短い。このペースでできる限りfitness Club通いを続け、月間距離を維持したい。今月の成績は、自分に“御苦労様”の心境で眺めました。

2013年1月24日木曜日

[IS-REC] 岡本 卓「薬がへらせて、血糖値にもしばられない糖尿病最新療法2」読了メモ


前著「インスリン注射も食事療法もいらない 糖尿病最新療法」は一般的糖尿病治療の問題点を鋭くつき、インスリン治療や血糖降下薬による低血糖に悩まされている患者に正しい糖尿病治療の知識と勇気を与える好著であった。
表題の本書は前著に引き続いて出されたもので、その後の糖尿病治療の最新事情を踏まえ、また前回の内容を更に吟味して一般臨床医や糖尿病に関心持つ読者に一線の開業臨床医である著者が考える糖尿病治療のベストを提案した本である。

この4年間で世界の糖尿病治療は大きく変化


   前著で血糖を下げすぎない治療を強調した著者の主張通り、最近の糖尿病治療方針は厳密な血糖コントロールから穏やかで血糖を下げすぎない治療に変化してきている。それは糖尿病治療予後の結果から「高血糖は確かに困るが低血糖はなおさら悪い」という事実に基づく。
本書ではさらに糖尿病患者にうつや認知症が多く、その頻度と血糖値は相関せず治療自体との関連が疑われること、日本の糖尿病治療の現状は未だ血糖値至上主義であり、その結果に基づいて厳しい食事制限が課されることの問題を鋭く追求している。

HbA1c基準でみた血糖コントロール

   英国と比較した日本はHbA1c基準でみても血糖コントロールが厳しすぎ、低血糖リスクが高いと警告する。英国は慢性疾患に対する開業医向け臨床指標が決められ、糖尿病コントロールに関わる血糖基準値は国立最適保健医療研究所(NICE)のガイドラインに定められ、その糖尿病治療基準はHbA1c6.5~7.5、低血糖リスクを最小限とするよう勧告しているという。また糖尿病治療指針として血糖値やHbA1c値のほか肥満度や禁煙指導、入中微量アルブミンなどの測定と記録が保険点数の加算ポイントとなっている。

インスリン治療とうつの関係


   第二章では重症糖尿病でインスリン治療中患者にうつ発生が多く、インスリンとの因果関係が疑われていること、うつと糖尿病が合併する場合、死亡率は両者のない対照群に比較して3倍以上になると報告されていると述べている。また韓国の大規模研究では糖尿病で自殺リスクの関連が指摘されこれには血糖値との関係は認めず、背景に糖尿病治療が関わっている可能性が高いという。

糖尿病と認知症

   最近、糖尿病と認知症の関係・関連が取り沙汰されている。著者は低血糖の影響ものさることながら、インスリン抵抗性による高インスリン血症とアルツハイマー病との関係について言及し、アルツハイマ-病は3型糖尿病とも言える病態が背景にあると指摘する。衝撃的事実として脳内にもインスリン産生機構があり、その働きで神経細胞の栄養が賄われ、その分泌不全や抵抗性がアルツハイマ-病の引き金になるというのだ。著者は 元来アルツハイマ-病研究者であり、こういった情報も本書で書かれていることは特に興味深い。

私の読後感


   「糖尿病治療の目的は合併症の予防、小血管症や大血管合併症である心筋梗塞や脳梗塞を起こさないこと、その指標として血糖値至上主義に陥らず大病院にあっても患者さんのQOLを考え、家庭医マインドが必要なこと」著者が終章近くで強調したことである。

   いわゆる生活習慣病についての情報は専門書を含めて巷にあふれている。本書は私にとって製薬メーカーとの利益相反に目配りしながら糖尿病治療の情報真偽を見極める良い指南書となった。



2013年1月23日水曜日

[Med-REHA] 脳卒中重症後遺症患者HKさんのCureとCare・・・・何をなすべきなのか?

左麻痺と劣位症状を後遺して在宅ケア開始したが・・・

点滴1301[7]

   HKさんは6年前までタクシー運転手。ある日、歩行障害に気付かれ症状進行、急性期病院でアテローマ血栓性内頸動脈閉塞による皮質域含む右半球脳梗塞の診断であった。

   急性期治療後、我々のセンターに紹介。昼夜逆転・失見当加わり、約3ヶ月のリハビリ入院で在宅ケア準備を行い、歩行不能、介助での車椅子レベルで自宅退院した。麻痺と失見当、注意障害や落ち着きのなさ、など劣位症状、麻痺下肢痛など、訴え多く、自宅介護する妻の苦労は相当であったようだ。しかし、その後外来に定期的にやってくる本人や家族(妻)は意外に明るかった。妻は病院での訓練と指導で多少なりとも本人が意欲的に対応する様子をみること、主治医にそれなり状況を聴いてもらえる、そして何よりHKさん本人が病院のレストランで焼き肉定食を食べるのを楽しみに、積極的に受診していたこともその理由だったらしい。

キーパーソンの妻倒れ・・・

   しかし3年前、キーパーソンの妻が病に倒れ、ショートステイを利用しながら長男・次男が交互にケアを担当するようになり状況は激変した。週日のステイ利用で本人の口数が少なくなり、食事の影響か体重減少も目立つようになった。元々大柄であったHKさんだったが、体躯は一回り小さくなり車椅子の姿勢障害も目立つようになった。月1~2度程度の外来受診と指導ではどうにもならないことだったが・・・

微熱が続き・・・

   先回受診から正月を挟み来院したHKさんは、さらに焦燥し微熱あり、採血検査では炎症反応強陽性、栄養障害と消耗による貧血が認められた。胸部レ線で気管支陰影が増強して誤嚥性慢性気管支炎の所見であった。外来で抗生剤点滴静注と脱水に対して補液を実施したが、誰しも治癒(Cure)はし難いと判断される状況であった。

キュアからケアへ

   家族介護が限界を超え,施設利用でも手に余る状況。思わず社会制度改革国民会議での副総理の発言(麻生失言に賛否 終末期医療への言及メディアは否定的だけど… - 政治・社会 - ZAKZAK:)が脳裏を過ぎるが、夫婦愛故にケアに熱心だったHKさん奥さんの顔を思い出すと頭の中は真っ白で次になすべき事が思い浮かばない。しかしやはり冷静に考えるとキュアからケアへのパラダイムチェンジhttp://amzn.to/10KRJCnが必要である。

HKさんの快復力に掛けることとして、施設宛てに現在の身体状況を記して帰院していただく事とした。

2013年1月21日月曜日

[IS-REC] 毎日新聞・風知草(山田孝夫)をみて、鈴木孝夫『人にはどれだけ物が必要か』を読む

大晦日の新聞に掲載された記事に心を動かされ、すでに初版から20年近い歳月を経過した言語社会学者・鈴木孝夫の本を取り寄せ、読み終えた。

風知草:人にはどれだけ物が必要か=山田孝男- 毎日jp(毎日新聞):
'via Blog this'

風知草の中で目を引いたのは鈴木孝夫の本書前書きで引用される、トルストイの民話「人にはどれほどの土地がいるか」である。この民話の引用の前書きから始まる本書を相当の緊張と、ある種の憂鬱さを覚えながら、現代社会の時代閉塞的状況に照らして20年前に書かれたものとは思えない達観した現在に通ずる認識に平伏して最後まで読み通した。

現在の不況は歓迎すべき第一歩

   なんとアイロニックな言いようだろうか。本書後半の1992年10月グリーンブルー(日本公害防止技術センター)創立20周年記念シンポ講演「国際化時代の環境問題」で発言された文章の一部である。今や自民党安倍政権となり、円高デフレ不況克服として無定見とも見える歯止めない国債増発をして経済活性化策が取られようとしている。記事「風知草」後半で山田はこの記事を書くつい数日前、著者鈴木に会って、彼の2012年歳末所感を記している。現実が鈴木の理想と逆方向へ動き、彼の警告通り、手遅れとなった全地球規模破壊がさらに進むのではないか?その不気味な足音は20年前とは違ってより明瞭に聴こえていると感ずるのは小生だけではないだろう。

金魚鉢としての地球に住んでいること

   人は自分を含めて快適で豊かな生活を求めて日々努力を重ね、切磋琢磨して毎日を送っている。そして人一倍の努力をすれば、それなりの報酬や待遇を得て、贅沢とまでは行かずともそれなり快適な生活が送られるのは当然と考えている。

   地球という規模でみたとき物資の循環では金魚鉢と同じ閉鎖系に我々は生活している。我々がこの金魚鉢の中で快適生活を願うとき、それは人間以外の種や自然の多くの犠牲の上に築かれていることを知っておく必要があるというのだ。

自然や環境がどんどん破壊されてゆく

   「日本野鳥の会」顧問でもある著者鈴木はみかける野鳥の種類が激減している事を当時から指摘している。地球温暖化、「神の火」原子力を手に入れた錯覚から原発を推進し、事故で制御不能に陥っている自然災害後の福島原発。神や自然という人知を超えた存在に畏敬の念を忘れた、経済万能、科学万能の考えは益々金魚鉢の中にいる我々をどんどん窮地に落とし込んでいっている。

   「高齢化に加えて未曾有の経済格差・貧困社会をどうするか?」という自分一人ではどうにもならない課題はともかく、以前読んで紹介した『免疫の反逆』、すなわち、ここ数年の自然環境や生活環境悪化から自己免疫疾患急増の警鐘を鳴らした好著を引用するまでもなく、自己の健康管理・維持も困難となってきていることを実感する。本書で書かれた鈴木の予言、“地球はこのままゆけば確実に破滅する”が真実そして現実とならないように祈るばかりである。



2013年1月19日土曜日

[IS-REC] 江部康二著『糖質オフ!健康法』を読む

●大櫛先生の本に勧められ・・・

   糖質制限食について、大櫛陽一著『間違っていた糖尿病治療』に触発され、以前関連する著書を読んだことのある、江部康二先生の本を再び読んだ。彼の近著が表題の文庫本である。その内容は読む前から十分想像されたが、今回この本で強調されているポイントはその副題にある、「主食を抜けば生活習慣病は防げる!」ですべて語られている。その説明内容は経験的であるだけでなく科学的でもあり説得力がある。特に私の関心ある運動・スポーツと栄養の面で、大櫛先生同様にスポーツ栄養で推奨されている糖質負荷の弊害面がこの本でも強調されている。

●血糖値上げるのは糖質だけ

人類は元来糖質オフの食生活であったこと、炭水化物(穀物)が人類の食生活に利用されるようになった歴史は極く浅いことがまず背景として語られる。そして血糖値上昇の栄養素はこの炭水化物に含まれる糖質のみであることを、再三強調している。


●血糖上昇が何故身体に悪いのか?

江部先生、「人の体は穀物中心の食生活に適応していない!!」そして、「過剰糖質は万病のもと!!」と断言する。過剰糖質はインスリンにより脂肪となって肝や筋肉、内臓に蓄積される、反復する高血糖(グルコーススパイク)により動脈硬化の引き金である血管内皮障害が生じる、と説明(その通り!!)。江部先生自身が和食中心のヘルシー食生活をしていて糖尿病となってしまったと経験的に語り、糖質中心となる和食の弊害を説いている。そして糖質オフを実践して高血糖改善、良好な血糖コントロールに戻ったというのだ。

●脂質悪玉は間違い、グルコーススパイクによる血管炎がなければ高脂質でも動脈硬化は起こらない!!

著者は「糖質オフで脂肪が燃えやすい体となる」とも主張。そして大櫛先生も文献引用しながら説明しているように、脂質異常の是正が生活習慣病との関係で強調されるのはどうも製薬メーカーが関わった利益相反に原因があると批判している。肥満や動脈硬化の原因、高血糖による老化物質AGEsの蓄積、すべて糖質摂取が元凶というのは各種の傍証からも説得力がある。


●糖質制限でケトン体を使える体になる

    糖質制限で脂質を利用できる代謝系が活発となり、ケトン体を使える体となる。脳は主に糖質をエネルギーとして利用しているが、これが唯一のエネルギーという説明は誤り!! 糖質欠乏状態ではケトン体も十分エネルギー源となる。赤血球は唯一糖質エネルギーが必要。これは肝臓の糖新生で十分まかなわれる(という)。

●糖質制限食の合理性

以上、糖質制限食の合理性は大櫛先生や江部先生の説明で信頼足りるものと思ってしまう次第。私自身、これで糖質制限食信者になりつつある。

 

●糖質制限食批判

しかし糖質制限には糖尿病学会や臨床栄養学会が警告を発している(但しそのトーンを強くは感じられない)。従って糖質制限について、単なる信奉者ではなく科学性に裏付けられた確信に至るにはやはり「臨床栄養や生化学の基礎的勉強が欠かせない」というのがこれらの本を読んだ私の率直な結論である。

2013年1月18日金曜日

[IS-REC] 日体協公認スポーツドクター養成講習会基礎Ⅱ第二日目参加メモランダム


●講習二日目の朝(1月13日)も好天に恵まれホテルの窓から皇居方面に昇る朝日を拝み、簡単な朝食後、徒歩で参加。内堀通りを走る老若男女のジョッガーは相変わらず多い。コートを脱ぎバックを背負って速歩ないし半分駆け足で歩く。身を刺す朝の冷気が心地よい。

(1)いわゆる内部障害リハビリテーション

 

活動性が高いと生存率は向上する。心臓疾患・高血圧・糖尿病など、メディカルチェックの上、運動療法が推奨される。運動には心理効果もあり抑うつなどの一部精神疾患や認知症にも効果ありリスク管理のうえで行えばよいことずくめ。
但し心臓リハビリテーションの事前チェックやその後の管理は多職種包括的チームアプローチで


(2)運動器リハビリテーション

      器質的・機能的障害発生後のメディカルリハビリとアスリートの競技復帰までのアスレティックリハビリがある。特に後者は再損傷予防の観点から復帰までのプロセスに十分配慮が必要。

(3)保健指導

      保健指導は医師の義務であることが忘れられがち。食事内容や喫煙・飲酒・睡眠、うつや気分など精神心理的項目も大切。単なる生活習慣の管理や安易な言葉による指導ではなく、さまざまな行動変容の段階に応じた心理的支持や支援が必要。

(4)障害者スポーツ

パラリンピックは、現在オリンピックと車の両輪東京オリンピック誘致のみの強調は片手落ち。障害者のスポーツは心身の健康維持にきわめて有効だが、障害者特有のリスクや合併症も知っておく必要がある。

(5)ドーピング防止

ドーピングの知識はスポーツドクターとして必須だが、押さえるポイントが多く治療薬に多くのドーピング禁止項目にふれる薬剤あり、基本的事項に加えて十分新しい知識を吸収する必要あり。応用科目でも講義が用意されているのもこのため。


(6)スポーツ現場での救急処置

スポーツ現場に限らず、心肺蘇生法の現在標準的に行われる方法など勉強となる。蘇生はまず十分な胸骨圧迫による心マッサージ優先(BSLアルゴリズム)。

●講習二日間の感想

   今回の講習はスポーツドクター研修講義基礎科目Ⅱ。系統的にこういった講義を受けるのは、ベテラン・リハ医師である小生の立場でも新鮮で知識整理の上からもとてもためになりました。新年度実施受講予定の応用科目講義も今から楽しみです。


[IS-REC] 日体協公認スポーツドクター養成講習会基礎Ⅱ第一日目参加メモランダム

 

●上京して久し振りの屋外散歩を満喫

 

       2013年1月、表記講習会に参加。秋田は大雪で夜間出発便に多少遅れあったが、空路往復は何とかトラブルなし。帰り1日遅れると、関東の積雪トラブルで帰られない処だった。
   宿泊先の半蔵門から飯田橋まで徒歩40分、内堀通りから九段下経由で久し振りに心地よい散歩を楽しんだ。

●講習1日目はスポーツ外傷と障害など各論

SPORTSDR1

(1)脊椎・体幹

基本事項として頸椎・腰椎レベルの障害を知る上で、荷重が椎間板と左右椎間関節の3点支持でなされている点がポイント。スポーツよる脊損発生は水中飛び込みやアメフト、スキーなどで多く、事前の注意喚起やルール改正で以前に比して減少しているとのこと。個体要因としてやはり脊柱管狭窄のケースは要注意!!
   競技スポーツ経験者の慢性障害としては腰痛が多い事、スポーツをする小中学生の腰痛は椎弓疲労骨折が原因。脊柱・体幹のインナーマッスル強化で体幹安定化することで予防可能なこと。

(2)運動負荷試験


   負荷試験は、実施してもすべての突然死を予測できないことから安静時心電図所見で適応を選択して行うのが現在の趨勢。ただ6メッツ越える激しいスポーツを行う場合は実施すべきである。負荷時所見として要注意は負荷時無症候性心筋虚血や不整脈、異常高血圧。既存疾患の運動療法が目的の場合、リスク評価のため運動負荷試験を行い、運動処方を行うこと。運動負荷なしの場合、運動療法における負荷強度は安静時心拍+推定最大心拍×(0.3~0.5)などが参考となる。

(3)スポーツによる下肢外傷

 

下肢外傷は、いわゆる足関節捻挫が多い。靱帯損傷が伴うことが多く、不適切な処置は後遺症を残す(足根洞症候群など)。固定は足関節背屈位で行うこと。疲労骨折やアキレス腱断裂も多い。膝関節損傷では前十字靱帯(ACL)損傷が重要。膝関節腫脹、関節内血腫あればACL損傷が濃厚。


(4)スポーツによる頭部損傷

 

脳外科が関わる外傷では、一見軽微な脳震盪に注意!!
受傷後時間を経て症状が出現したり悪化する場合あり。またボクシングなどで反復する頭部外傷は高次脳機能障害や認知症の原因となる場合がある。スポーツ現場での脳震盪評価には簡単なバランステストや記憶検査が挙げられている。


(5)運動による内科的諸問題

急性障害として運動中の突然死と熱中症が問題。マラソンなどでの救護体制がポイント。熱中症は病態を知った上での現場対応と後方病院での治療手順を知っておく。


●第一日目の感想

結構、中身が濃かった。特にスポーツ整形外科的診断と治療で新たに知ったことも多く勉強になりました。


2013年1月3日木曜日

[IS-REC] 本田健著「60代にしておきたい17のこと」を60代の私が読んで感ずること




    本屋に行くと、新書版コーナーにハウ・ツー本があふれている。齢を重ねて還暦を過ぎても自分の生き方に納得して自信を持っている人間などそうそういるものではない。物事を知るにつけ、自分の無知に暗然たる思いに駆られ、今後の限られた時間をどう使うか、健康で体力と知力が続き、意欲のある間に何をなすべきか悩むのが凡人の常と思われる。
    もっとも社会・経済状況厳しく、明日の生活の糧をどうするかで精一杯の同世代も多い故、こういった悩みは贅沢なのかも知れない。

タイトルの魅力

    さて、本のタイトルは著者のシリーズものであり、特段工夫されたものではないだろうが、煩悩多き60代の普通人には魅力的タイトルに映る。手に取り購入した数冊の本の中で一番最初に読んだ。著者の挙げる17のことには自分が既に実践していること、これからやろうとしていたことなど、共感するところが確かに多い。一方まだ60代の気構えが足りないのか、あるいは仕事が現役のせいか、「9.親の死んだ年齢を数えない」とか、「14.子どもの人生に・・」、「15.男、女であること・・」、「16.未来に投資する」、「17.愛を伝える」など、まったく考えも及ばなかった項も多い。そして、その中にはそれなり納得する所もあり、この17項目で自分の60代にしておくべき事柄を整理することも確かに可能だろう。

物足りなさ残る読後感は何から・・・


    しかしこの本の読後感としてはどうしてもある種物足りなさを感じてしまう。人生80年時代でも60過ぎの普通人が出来ることは時間的にも社会経済状況からも限られており、可能ならば網羅的、羅列的ではなく課題に優先順位がつけられる何らかの思想性、一生を貫くミッションのようなものがほしかった。最近、自分の生き方、あるべき姿、平たくいえば「毎日の過ごし方」を考えるために仏教哲学に興味を持ち関連の書籍を読むことも多くなった。

残る人生をどう生きるかと結びつけて

    世界の人口の16%(11億人)は無宗教だという。死を考えるためではなくどう生きるかのために自分にも宗教性が必要と痛感している。本田氏の書かれた本書は60代の人間がなすべきことを網羅したが、後味の残らない無味無臭の本となっているのが残念だ。



[IS-REC] 佐藤優著「読書の技法」は「勉強の技法」




      「週刊東洋経済」連載、佐藤優の「知の技法・出世の作法」はいつも読み応えがある内容で、そのためだけにこの週刊誌を手に取り購入することも多い。
    本書「読書の技法」は昨年8月に第一版が出て以来、短期間にベストセラーの一冊となっているらしい。しかし本書を読み始め、難しげで明らかに自分の関心事とはかけ離れた多数の本の引用あり、小生すぐに拒否反応を起こしてしまった。挿し絵にある彼の書棚や書斎の写真も元々住む世界の違う天才肌の人間を映したにすぎない嫌らしさを感じた。

にもかかわらず読み進む

にもかかわらず、結果的にはまさにこの本で示される読書法を無意識に実践して目次やあとがきに目を通した。そして改めて身を構えなおし最初の部分、すなわち彼の生い立ちから現在の多読と速読の方を体得するに至る部分を読んだ。
    内容的には第一に、速読・超速読はなんといっても背景となる基礎知識の有無がその前提であるという当然至極の理が示される。第二に、速読・超速読は後で参照する必要が生じたときのインデックス作りであることと断っている。第三に、読書により自分が消化して自分の言葉や知識に血肉化するには時間をかけ、熟読し、メモノートを作る作業をしてはじめて可能となること(しかもその数ヶ月後に!!)と述べている。
    これらの記述は体験的に書かれ、非常に説得力がある。勿論単なるハウ・ツー本でないことは確かだ。
    小生に最も役立ったのは本のタイトルにある「読書の技法」ではない。「大人のための勉強技法」である。基礎知識、自分に不足する基礎学力をつけるために高校までの教科書やその参考書がベストという指摘、その内容を具体的に例証した記述もとても参考となった。
    確かにわからないところがあれば辞書を引くように、中学・高校の学生向け教科書や参考書に戻ると簡潔でわかりやすい納得ゆく記述に行き着くことが出来る。特に政治・経済・社会に関して巷にあふれる情報を的確に理解するには、自分の信ずる何らかの道しるべと、基礎知識・基礎学力(知的体力)が欠かせない。本書は、やはりそういった体力を養う「勉強の技法」を伝授する指南書として光っている。

2013年1月1日火曜日

[IS-REC] 2012年12月、私の運動記録から

       オムロン歩数計 Walking styleによる12月の運動記録から2012年最後の運動状況を振り返る。年の瀬多忙な時期ながら良く頑張った結果といえる成績となり、大いに自己満足。






あと1kmで月間通算160km台だったのだが・・・

暮れ28日以降もう少し頑張っていれば月間160kmの目標値に到達できていたと思うと少し残念。但し、28・29日は日当直。病院で仕事であったから致し方仕方なかった。
    2013年元旦は積雪多く、また午前中から断続的に雪が降り続いている。なかなか屋外に出られず、終日読書三昧。
    明日は帰省中の息子と秋田温泉プラザに行く約束。Fitness Clubが日中使えるはずで、時間あればこちらにも顔を出して運動量を稼ぎたいものだ。

[Med-REHA] 大櫛陽一著『メタボの罠』を続けて読む

    大櫛陽一先生の近著「間違っていた糖尿病治療」(http://amzn.to/TtOvyp)に大いに感銘を受け、引き続き遡って以前に先生が一般向けに書かれていた『メタボの罠』(角川SSC新書)を読んだ。

この本は既に上梓されて5年経過しており、「間違っていた・・」に比べて糖尿病治療の部分を含めて、歯切れの悪い部分を残している。しかし、生活習慣病予防健診・特定健診への露払いとして、意図したか否かは別として統計手法の誤りを含む捏造的データをもとに創り出されたひとつの診断クライテリア、「メタボリックシンドローム」の持つ問題点と非科学性を余すところなく語っている。

    その誤りやいい加減さは、世界標準からみて素人眼にもおかしいものが一杯ある。一体どうして現在も引き続いてこのコンテクストの元に生活習慣病対策が取られ、年々1兆円もの医療費増大が叫ばれながら薬漬け医療がまかり通っているのか、まったく不思議である。

    自他覚的に健康な人も加齢に伴ってある程度の身体不調を自覚してくるのはある意味当然である。メタボ健診では健常人の半数以上をメタボないしメタボ予備軍として、その網の目にたぐり寄せてくる。生活習慣改善の注意喚起に留まればあまり害もないだろうに、年齢を考慮しない脂質や血糖値、血圧値の基準からオーバーしており、生活指導のみでは改善困難として世界標準からみると不必要な抗高脂血症薬や降圧薬が医者から処方される。

    経歴をみると大櫛先生はMedical Doctorではないようだ。日本のメタボや高血圧の治療指針が利益相反に関わる製薬企業の支援を受けた医学“研究者”が素知らぬ顔で薬の宣伝まがいに指針を出す。それを権威者の提言として我々が唯々諾々と承り、患者さんによかれと治療している構図である。

    大櫛先生はこういった構図の外にある医療統計の権威者であり、多くの健診データを解析して生活習慣と死亡原因の関係に「メタボ」予防の薬剤治療を持ち込む危険性を指摘している。降圧剤や抗脂血症薬の使用は、糖尿病の三次予防や家族性脂血異常症などのケースに限られるべきだとの意見が大櫛先生の趣旨であり、その根拠として挙げたデータにとても説得力を感じた。今この本を読んでもわれわれが日常診療を反省するのに大いに役立つことは間違いない。

[IS-REC] 三吉神社に初詣



       朝日新聞2012/12/20阪によると、世界の人口の16%、11億人が既存宗教を信仰しない無宗教だと伝えている(米調査機関ビュー・リサーチセンター18日報道)。これは日本と中国に多く、キリスト教、イスラム教に次ぐ数だという。日本人がホントに無宗教かどうかはさまざまな議論がある。今年元旦早々、多くの日本人が近くの神社に初詣に出かけているし、葬式仏教と揶揄しながらも仏壇に花を飾り、彼岸やお盆には墓参りにでかけるのが今も一般的な日本人の姿である。
      かく言う私も本日元旦の朝早々、運動不足の解消兼ねて片道20分の太平三吉神社まで足を運んだ。最近は仏教哲学に興味あり仏教入門書や関係雑誌に眼を通す事も多くなったが、未だ宗教が心の拠り所となる心境にない。
      初詣の今日も形ばかりの賽銭をあげ、この時ばかり今年の息災を願った次第。実際、心の安寧もその前提となる健康も結局のところ、他力ではなく自分の努力と前向き姿勢で求めてゆくしかないと感じている次第。そして新年の抱負としては、「今年もなんにでも興味を持ち、感動する心を忘れず、仕事は抗老化をテーマに前向き思考で毎日を送りたい」。

2012年12月26日水曜日

[Med-REHA] 介護老健施設の現況と、映画「わたし」の人生~我が命のタンゴ~


リハビリ健診

    “リハビリ健診”として、年に1度、近くのショートステイとデイ・ケアを扱う介護老健施設利用者を対象に健診を行っている。その動作能力と認知機能を診ているが、在宅一人暮らしのデイ・ケア利用者を除いて、対象者の認知症割合が高いのには驚かされる。

    厚労省資料によると、認知症を伴う施設入所者は高率に寝たきりとなっている。幸い、健診先施設スタッフの懸命な努力で長谷川式検査低得点で明らかに認知症があっても、記憶・記銘力低下が主体で、会話はしっかりしている。そういった方の中には“新聞読んでますか?”の問いかけに、「知人が亡くなっていないか、死亡広告をよくみています」と答えて社会性が失われていない方もいらっしゃる。これらの施設では認知症があっても意外に寝たきりや問題行動は目立たない。しかし経年的検査で動作能力・認知能力ともに徐々に低下してきており、その対策の必要性を痛感する。


「わたし」の人生~我が命のタンゴ~
   永年親しんできた、秋田シアタープレイタウンが閉館するので興業最後となる映画を観てきた。標題の映画では、精神科医・和田秀樹が監督で前頭側頭型認知症家族の苦悩を扱っている。セクハラを頻繁に起こす英文学者で元・大学教授の父親役を橋爪 功が、主人公で娘役を秋吉久美子が演じ、好演技をみせている。注目は認知症の父が利用する施設の医師役が脇役ながらすばらしかった。

    しかし現実にこういった家族のサポート・アドバイスをゆとりを持って出来る施設の医師はそんなにいるはずもない。また多くの認知症入所者を抱える施設にしては施設環境も職員もすばらしく、現実とかけ離れた印象であった。


   たまたま同じ日の夜半、以前読んだ本で感銘深かった本の朗読劇がラジオで放送された。やはり高齢者・認知症を扱う施設職員を主人公とする作品である。
   山田太一原作『空也上人がいた』のFMシアター再放送である。ここでは全介助で認知症のお年寄りを扱う若い職員の苦悩が描かれる。私にとってはこちらの方がずっと現実味があり、またこういった苦悩と共に一緒に歩む空也上人の存在をひとつの心の拠り所として求めることを知った喜びがあった。


   リハビリテーション施設も生活型施設である老健施設も対象者は高齢化し、その認知症が問題となっている。認知症にいくつかの病型があり、中でも脱抑制による問題行動が家族を苦しめる、“前頭側頭型認知症”についてもこの映画をはじめとして様々紹介されるようになった。病型を知る事により適切な対処法もあるが、一般に認知症患者や家族の苦悩は計り知れない。この映画の結びとなるような、ある種のハッピーエンドがすべての認知症家族に期待出来れば良いのだが・・・・






2012年12月17日月曜日

[Med-REHA] 杉本正信著「ヒトは120歳まで生きられる」から

   寿命の分子生物学を語る、サイエンス・ライター・杉本先生の新書をようやく最後まで読んだ。

   何冊かの本を並行して読んでいると、内容が濃いだけについついこの本が後回しとなって、結局読了まで一と月以上をかけてしまった。 

“佐藤 優流読書術”その熟読法からすれば、まだまだ読みは足りないだろう。しかし同じ所を何度も読んで、その都度納得を深め、新たな発見をし、そして自分の目下の関心領域であるアンチエイジングの知識整理が確実になされていった。

   アンチエイジング医学は長寿科学(医学)の別表現であり、いわゆる健康寿命を全うする手段を研究し、その具体的ノウハウを提供する。この本ではヒトの長い歴史の中で長寿の限界が過去であれ、サイエンスの進んだ現代であれ生物学的ヒトの寿命が120歳に変わりのないこと、その長寿の鍵は外的環境(家族・社会・医・薬・食)と精神(心)、そして身体の問題として分子生物学的レベルで細胞中ミトコンドリアや細胞の再生修復に関わるテロメアにあること最初に述べられている。後章は順次その解説となる。

   最初に長寿命を全うするには免疫機能による生体防御機構が十分発揮される必要のあること、次に細胞の再生と修復が円滑になされるために放射線や酸化ストレスから遺伝子を守る必要のあること、次に目下、ヒトの死因第一位である、がんを如何に体内に発生させないか、また発生してもうまく自然修復機能を働かせて消滅させるにはどうしたらに良いか?が語られる。次にヒト組織・細胞レベルの再生機能と再生医学の話、再生医学の展望はどうか、などが整理されている。最後に寿命を延ばすライフスタイルとして、身体素因に加え心の問題が長寿命に如何に大切かを強調する。ペットの癒やし効果、性格要因や“健全な精神”の長寿に果たす役割、積極生活を促す街づくりが大切な事を強調して最後を締めくくっている。内容は盛りだくさんだが長寿やアンチエイジングの基本は意外に単純なのだということがこの本で得た私の結論である。

   最近、核遺伝子ではないミトコンドリア遺伝子の導入による治療技術が開発され話題となっている。こういった技術開発や応用があっても、ヒトの最大寿命は今後とも変わりないことだろう。



2012年12月16日日曜日

[Med-REHA] 大櫛陽一著「間違っていた糖尿病治療」の衝撃

医学芸術社という馴染みのない出版社の本で社会保険旬報の簡単な書評を見なければ目に触れない本であった。糖質制限食がダイエットや糖尿病治療食として好意的に受け取られるようになり、最近では糖尿病治療に関係した学会でもそれまでの全く無視する立場から、一定の評価を加えたり、批判的立場からのコメント、素人が闇雲に実践した場合の危険性(心血管死亡リスクが高くなる)を指摘するなどの動きがみられるようになった。
   糖尿病予備群や糖尿病患者が激増して糖尿病非専門医でも治療に当たる機会が増えている。リハビリ医は脳卒中などの生活習慣病を背景に生じた障害患者のリスク管理と入院リハビリ終了後の患者フォローアップをするのでやはり相当数の糖尿病患者を扱っている。体験的に糖質制限食はこういった患者に有効である。障害があると運動過少からしばしば運動不足による肥満がおこり機能低下をきたしてしまう。こういった場合の食事指導にカロリー制限より糖質制限の方がわかりやすく指導しやすい。
   これまで異端的に扱われているが一般向けに書かれた江部先生や釜池先生の本がとても参考となっていた。これらの本はそれなりの臨床経験や生化学知見に基づいて書かれているが、文献的裏付けに乏しい印象は拭えなかった。 
   この度出版された大櫛先生の本はこれまで糖尿病関連学会はじめ権威ある医学界が推奨してきた糖尿病の基本的治療方針のみならず特に糖尿病の心血管合併症、脂質代謝異常、降圧治療のあり方にも文献的根拠を挙げながら批判している。また糖質制限を基本とした糖尿病治療・生活指導の全体像も提起している。
   これまでの糖尿病治療指針を全否定するようで表現が過激なところ、取り上げたエビデンスの解釈に誇張を感じるところもある。一般受けはするだろうが、医学書としてみるならばさらに内容を批判的に吟味する必要があろう。
   それにしても医学読み物としてはなかなか痛快な出来映えの本となっており、こういった本にありがちな部厚く読みにくい印象もなく一気に読めてしまう手軽さは大いに気に入った次第である。

2012年12月11日火曜日

[IS-REC] 2012年11月の私の運動記録から

   毎日の運動記録をオムロンWalking Styleで行っている。(商品情報|歩数計 Walking style HJ-720IT|オムロン ヘルスケア201211OMRON記録
   ジョッギングやランニングを含む月間歩行距離が130km台の惨めな結果に較べると、11月は150km台でまずまず。
   距離は夜間のフィットネス・クラブのジョギングやランニングで稼ぐのでこれを怠ると途端に月間移動距離実績は低下してしまう。Crying faceSurprised smile
   11月は1日平均歩数7722歩、しっかり歩数(事実上、ジョギングやランニングによるもの)4115歩(1日平均時間28分)、既述のように月間移動距離は150.46km。
   私の健康生活、運動目標は1週間40km以上(このためには1日10km走行するとして週4日フィットネスにゆけば良い計算)。で月間目標は160km以上。決して無理ない目標とは思いつつ、期日付きの仕事でストレスが増えると、そしてこの時期、風雪・雨が強いとついついそれを理由にフィットネスの日課を怠ってしまう。運動後の爽快感はとっても格別なのだが・・・


2012年12月10日月曜日

[IS-REC] DELL XPS 13カスタマイズ、結局128-256G換装

【Hothotレビュー】 デル「XPS 13 スタンダードモデル」 ~デザイン性を追求した薄型軽量ボディのUltrabook:
   今年2月に発売されそれなり話題となったDELLのノートがデルストアで価格落ちして、しつこく案内がくる。ついに根負けしてポチッと購入。 ここ最近Windowsノートは使っていなかったので、このMacBookAirの向こうを張ったWindowsノートを仕事用に購入することとなったのだ。
xpsのssd交換
   ところがである。ものが到着するまで1週以上待たされた上、到着した品は初期不良。オーディオ機能がバツで全く音が出ない(カスタマイズしていてiTuneを入れていて気付いた。ナント鈍感!)。 しかしデルの出張サポートは意外に早い。クレームを出して2日後には交換部品が届き、その翌日には委託されたオムロンのSEが自宅に来て本体のマザーボードまで交換。お陰でXPS13のバラし方をすっかり修得することとなった。
   購入したXPS13の容量128Gに不安あったため早速、Crucial mSATA SSD256Gをアマゾンから購入。あれこれ苦労してシステムのクローンを作り(写真)、本体を再び自分の手でばらして無事、mSATA SSD256Gに換装。勿論、問題なく動いています。
   今回のDEll XPS13購入からそのカスタマイズSSD換装作業を貴重な自由時間と睡眠時間のほとんどを使って約2週間。投資額も当初間違って購入した2.5インチSSD(256G)や追加電源、ディスプレイ変換アダプタなど、xps本体に負けないほどの額となってしまった。いやはや・・・

2012年11月14日水曜日

[Med-REHA]わが回想に生きるひとびと~SSさん逝く

        15年来の付き合いだったSSさんが脳卒中再発後の誤嚥性肺炎・呼吸不全で亡くなられた。享年81歳。

      私と最初の出会いは、彼が64歳で右被殻出血を発症した時に遡る。

     彼は急性期治療を含め、その後のリハビリまで私の受け持ちとなった。いわゆる土建屋さんで医者嫌い、それまでろくに健診なども受けず、酒たばこは欠かせない生活を送っていた。

     日常のわがままをそのまま病棟生活に持ち込んだものだから、看護師や訓練士とトラブル続き。見舞いに訪れる奥さんもスタッフにはなはだ恐縮していた。それでも昔気質ゆえか、医者の私には絶対的に従ってくれた。

      耐糖能障害、虚血性心疾患、高血圧と生活習慣病の揃い踏み。その治療と生活指導、杖と装具使用での身辺処理自立で自宅退院した。

      しかしその後も、糖尿病性網膜症で光凝固治療、狭心痛発作、腰部椎間板ヘルニア手術など、続発症オンパレードでその都度の対応に私自身も大いに勉強させられた。

   発症から3年後、最愛の妻を膵臓ガンで失い、特養に入所。仕事を止め、子供もない孤独な生活。この大きく急激な状況変化で負けん気の彼もうつ状態となってしまった。だがその苦難も何とか乗り切った。飲酒・喫煙は私の説得でも止められなかったが、その量は少量たしなむ程度となり、入所先での生活にも徐々にとけ込んでいった。

   月一度の外来通院とその際のリハビリを楽しみにしていた。当初多量に使わざるを得なかった降圧剤や経口糖尿病薬も減量、スタッフへのわがままな言動、うつがひどかった時の「死にたい!!」の言葉も徐々になくなり、受診時に面倒みる施設職員や病院スタッフへの言葉掛けも好好爺そのものとなった。

   今年10月最後となった受診で血圧はそれまでになく低め、降圧剤を更に減量して帰した。その数日後、出勤してまもなく施設から電話あり、言葉が聞き取れなくなっているという。血圧はやはり低め。脳卒中再発としてすぐに救急病院受診を促した。

   その後の経過が気になっていたが連絡なし。11月初旬、香川の学会から戻った13日、施設からA4封筒に入った包みが届いた。前医とそのスタッフからの紹介状が同封され、急性期病院からは11月1日退院したという。その後、施設の食事で流涎とむせ込みがひどかったらしい。微熱が続き、嘱託医から抗生剤点滴の指示も出たが、結局11月10日呼吸困難となり、永眠したという。

   経過を知って別な対処もあったように思われ残念であった。しかしあまり苦しむことなく逝ってくれたとすれば、これも彼の本望だったかもしれない。

   今頃、あの世で妻と久しぶりに再会しているかも知れない。彼の嬉しそうな顔が浮かんでくる。合掌。



2012年11月6日火曜日

[Med-REHA] 脳卒中地域医療連携:秋田県南広域医療ネットワーク ・・・学会で意見交換を予定

    きたるべき少子高齢化社会の中で、地域住民が安全・安心な生活を送られるための基盤整備が急がれている。医療介護福祉分野では自治体レベルでその基本計画が策定され年度毎にその再検討を行っている。

    秋田県の脳卒中医療について、その現状と今後の方向性について議論する機会が与えられ現状を俯瞰するが、なかなか具体的解決の道筋は見えてこない。社会的共通資本(宇沢弘文)として医療や介護、福祉の現状を眺めると、その提供体制はいびつであり、施設面でショートステイなどが増加する一方、医療面での人的ソースの不足と偏在が過疎の進んだ東北地方で深刻な医療崩壊を招いている。無論、脳卒中医療についてもその例外ではない。

    私は県南地域に位置する中核的リハビリ施設にあって、ここ数年間、脳卒中地域医療連携協議会を立ち上げ、行政とも協力しながら問題に取り組んできた。

第51回自治体病院学会(香川)で報告

    全体レイアウト秋田県県南地域は県総面積の半分に当たり、大仙・仙北、横手・平鹿、湯沢・雄勝地区の3つの医療圏を持つ。この広域圏で脳卒中医療を担う回復期リハ病棟は、実質、当リハ施設のみである。この実情から発足した「秋田道沿線地域医療連携協議会」、行政に協力する形で発足した我々の施設も属する二次医療圏対象の「大仙・仙北地域医療連携協議会」、この二つ連携活動から見えてきた連携医療の現状や課題、自分の考える今後の展望をポスター形式で発表してくる。学会の性格から他の都道府県自治体病院の現状と照らした、我々の立ち位置確認や国レベルへの要望など、意見交換に留まらず、得るところは大きいと期待している。



2012年11月1日木曜日

[IS-REC]私の10月運動総量はさんざんだったが・・

 

    この10月、私の運動総量は期待値(週40km走歩行)を大きく下回ってしまった。この確認は万歩計オムロンWalking StyleからPCに出力された月間運動グラフで行っているので一目瞭然だ。健康オタクで食いしん坊である私の健康維持プラン実践はいつもなかなか厳しいのが現実。
    さて、身体維持に必要な利用可能エネルギー(Energy Availability)は総摂取エネルギーから運動消費エネルギーを引いたものこの利用可能エネルギーが除脂肪体重(LBM)1Kg当たり30kcalを下回ると代謝やホルモン機能に影響して運動能力、成長、健康に影響するという。

    筋量や体力を維持する身体メンテナンスには、運動が必須であり、オーバートレーニングにならない範囲で一定の運動を継続し、それに見合うカロリー摂取を考えてゆく、これが運動と栄養の基本原則だ。

    一方、長生きや健康維持に、少食、腹7分目~8分目が実証的に良いとされる。勿論これは壮年期や老年期を想定した食のあり方を言ったものだろう。自分は低糖質メニューをここ数年実践し、運動はフィットネスクラブでの速歩やジョギングを週合計距離40kmを目標として実践している。歩数や延べ走行距離を件(くだん)のグラフに見える化して確認すると運動を継続する意欲が涌いてくる。

    しかし現職で運動する時間はもっぱら夜間となる現実、ルーチンの仕事と期限付きの仕事が重なると心身共にクタクタとなってついつい自分を甘やかしてしまう11月こそがんばろう!! (まあ疲れている時は無理せず休むのも良いかもねえ・・)

2012年10月31日水曜日

[Med-REHA]臨床と日常コミュニケーション手段としての絵文字


    臨床現場での医師を含む医療者側と患者さんとのやり取りで意志疎通がうまく行かなかったり、互いに納得したつもりで実は相互の誤解であったことが後で判明する事がある。特に障害者や高齢者の訴えを聴いてその治療や機能訓練に当たる我々リハビリテーションの領域ではこの意志疎通がうまくいったか否かは決定的に重要となる。

なぜ患者と医師でRAの疾患活動性評価が異なるのか:日経メディカル オンライン:
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    疼痛など主観的評価がベースに入る機能障害評価は殊に難しい。日経メディカルオンラインに紹介された、RA(慢性関節リウマチ)の疾患活動性評価が患者と医師で異なる問題も同様であろう。

同期親友M君の仕事:臨床表現手段としての絵文字

    同期の親友M君は長らくこの問題に取り組んでいる。最近、彼からリハスタッフ用として学術誌講座欄に連載執筆した文献が送られてきた。頭痛や腰痛、そのほか表現自体が難しい五感に関わるコミュニケーションの可視化に取り組み、それが如何にセラピストにとって診療上のヒントとなるかを語っている。

絵文字や顔文字による表現は異文化に共通する

    過日、ミャンマーのリハビリテーションスタッフが視察研修に訪れた。その際、専門的内容に限らず、相互交流の場においても、つたない英語でのやり取りには骨が折れ、もどかしさを感じてしまった。こんな時可視化された伝えたい内容に関する絵カードがあればもっとスムーズに説明できたかも知れない。M君の執筆した講座には異文化でも臨床表現として絵文字が有用であったと書いてある。その通りだと思う。

日常臨床で使われる絵カード

    リハビリ目的で紹介入院してくる失語症や難聴の患者さんとのやり取りで、時に絵カードの使用がとても役立ち、コミュニケーションの代償手段として患者さんのご家族に指導する場合がある。このようにリハビリテーションの分野では絵カードが日常的に使用されているが、今後の高齢化社会にあってはコミュニケーションの代償手段として、またユニバーサルデザインの一部として簡便な絵解きと絵カードの類が役立ってゆくことだろう。

2012年10月28日日曜日

[IS-REC]和賀仙人岳で落とした登山案内はがき

       去る9月16日の和賀仙人岳登山では、姥杉までの旧街道に沿う広い登山道に比較して、それ以降の展望所から頂上への道のりは手入れ行き届かず背の高い笹藪に覆われた未整備道であった。やっとの思いでせまい頂上に到着後、すぐに同じ道の下山でも一瞬気を緩めると迷子となりそうな状況。

      そこで私は胸ポケットの登山案内葉書の入った袋を落としてしまった。10日程経って、その落とした葉書にあった私の住所宛に拾得物ありの連絡を宮城県多賀城在住、Sさんから頂いた。落としたカメラ 

  ( Sさんから届けられたカメラと葉書、そしてその人柄示す一文が添えられてあり)

    同じ熟年登山者らしい親しみのある筆致で拾いものは葉書以外にもあったという連絡。早速、小生所属する山の会の仲間に会長を通じて問い合わせした。あとでその拾得物がカメラである旨も、Sさんから連絡をもらった。その情報含めて会の仲間に連絡したがどうも落とし主は私の仲間にはいないらしい、Sさんにはそう連絡した。

仲間内のFさんが買ったばかりの高級カメラを落としていた

    ところがその後、仲間内のFさんが買ったばかりの高級カメラを落としていたようだとの連絡が会長からあり、びっくり。Fさんは落としたことがわかると仲間に迷惑がかかると、話すのを遠慮していたらしい。機種を照合して早速Sさんへ連絡。

    この度無事落とした案内葉書と一緒にFさんのカメラも届きました。もう戻らぬものと諦めていただけにFさんの喜びはひとしお。宮城多賀城のSさん、本当にありがとうございました。

[Med-REHA]ミャンマー・リハビリスタッフと交流


        10月22日から一週間の予定でミャンマーを代表するリハビリテーション施設からそのスタッフが視察研修に訪れている。JAICA大澤さんは以前、県内大学病院にPTとして奉職していたのがその縁である。ミャンマーは秋田の塩汁(ショッツル)と共通した漁醤が日常好まれ塩分摂取は秋田に負けず劣らず多いとのこと。正確な統計はないらしく国内の脳卒中発症率は把握されていないようだ。

       今回の視察研修は脳卒中リハビリのチームアプローチを学ぶこと。さて、ミャンマーの医学的リハビリテーションの歴史は意外に古く、日本リハビリテーション医学会の戦後の発展とほぼ時期的に共通する。しかし施設やスタッフは少なく、医師とPT以外の職種なく、ここ数年の民主化進展に伴ってつい最近、OTその他の養成校が認可されたらしい。脳卒中患者のリハビリ紹介はまだ認知度が低くあまりないとのことで外傷やリウマチなどが主。リハビリ医育成の教育はストレートで日本のように臨床他科からリハビリに代わるコースを取るものはいないらしい。臨床教授とPT、担当看護師を合わせ8名、通訳交えて10名越える一行に脳卒中リハビリの現場出である回復期病棟や慢性回復期療養病棟、訓練室を視てもらい、さらに医師含むリハビリスタッフからレクチャーを行った。英語でのやりとりは当方側含めてつたないが、JAICA通訳は優秀。飲み会での交流で友情と情報交換に努めたが、どこまで通じたかは不明。それでも顔の見える関係が出来てミャンマーが一段と身近に感じられるようになった。JAICA大澤さん、ありがとう。
写真は交流会で、Dr.Khin Thida Anung、Prof Dr.Than Than Htay、Sitt Lwin Ko PTと一緒に

[Med-REHA]日体協公認スポーツドクター講習会に参加しました

SPORTSDR1210201

       10月20・21日、東京ベルサール九段で日体協公認スポーツDr.講習会(基礎Ⅰ)を受講しました。普段接する部分からは少しはずれた領域でとても新鮮に感じながら聴講しました。ホテルから皇居外苑にそう緑豊かな道を約25分、早足歩きで会場到着。心地よい疲れで初日午前の総論的事項の講義で少しうたた寝したほかは会場前席に陣取りじっくり聴講。


「1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後にくすり」

  

        国の健康づくり政策は、これまで1978年から2012年まで4度の提言があった。特に今後の生活習慣病対策では、冒頭の標語をもとに健康づくりのための運動基準、運動指針2006が作られ、身体活動量、運動量の目安が示されている。「いつでも、どこでも歩こう1日1万歩、自分に合った運動でいい汗かこう」   2012年にはさらに健康増進の総合的指針が出され、「健康寿命延伸と健康」「格差の縮小」はじめ提言され、特筆する点は個人の努力とともに社会環境改善についても言及しているという。各論的事項では、整形外科的メディカルチェック、競技種目特性を考慮するとき、種目をコンタクト・ノンコンタクトとに分類すること。格闘技に代表される選手同士が肌を接する競技とそうではない競技に分けて考えると、チェックポイントが明らかとなるなど、基本事項を身につける上でとても役に立った。そのほかにも「女性と運動」、「世代別と運動」、「運動と栄養面」など、自分のスポーツや健康に関する知識を整理するとても良く組まれたプログラムで、スポーツDr.資格取得にふさわしい入門講義聴講でした。感謝、感謝!!

2012年10月19日金曜日

[Med-REHA]耳管開放症 STさんの場合

耳と三半規管
    9月に放送された、「ためしてガッテン、耳管開放症のお話」はとても勉強になりました。同期のKT先生、颯爽として格好良かった。どうもご苦労様でした。
    さて、耳管開放症の話しを聴いてすぐに思い出したのが、現在通院中のSTさんのこと。

仕事上のストレス続きでクモ膜下出血

当時49歳のSTさんは、眼鏡店責任者であったが量販店進出の過当競争で相当のストレスが続き、上背170センチの大柄に関わらず体重48kgまで痩せてしまった。その頃から頭に響く耳鳴りや不快感が続くようになった。そして2005年9月末、とうとうクモ膜下出血を発症してしまった。診断は右椎骨動脈の解離性動脈瘤破裂によるもの。第IV脳室急性水頭症を併発したが、破裂した血管は自然閉塞し、治療は水頭症短絡術のみで一命を取り止めた。しかし脳幹圧迫が続いて脳幹機能不全に陥り呼吸・嚥下障害、重度四肢運動失調を後遺、このためその後も生死を彷徨うエピソードや体幹失調で坐位不能の寝たきり状態が続いた。

根気強いリハビリで少しずつ回復

STさんと私の出会いはクモ膜下出血発症から3ヶ月目。気管切開され、経鼻胃管の状態であった。50歳現職の眼鏡店支店長STさんには何とか良くなって欲しいと、奥さんはじめ家族はみな必死であった。私が考えられること、そして持てる技術すべてを出し切るつもりで治療・リハビリに当たった。私のスタッフもできる限りの知恵を絞った甲斐あって、背もたれ坐位からつかまり立位が可能となり、胃瘻造設で栄養障害も改善した。少しずつ筋力・体力も改善し坐位で両手も使えるようになった。水頭症悪化による呼吸障害でトラブルもあった。しかし結局、気管切開も閉じられた。経口摂取も少しずつ訓練、回復には更に数年を要したが、注意すれば口から何でも食べられるまでとなった。

回復に伴い耳管開放症による症状を自覚

3ヶ月入院後、在宅に向けた準備を開始し、様々な続発症に対する対応を検討した。睡眠時無呼吸、発声時の両耳不快感、など耳鼻科的な問題、両下肢内反尖足傾向の出現、などなど。しかし本人が自覚的にもっとも辛いのはやはり会話の際に自分の声が頭に響く不快感で頭が痛くなること。体重は栄養障害改善で病前の元気な頃までに回復していたが、耳管開放症状が継続するのはやはりクモ膜下出血後遺症の影響も関わっているのだろうか?
     その後、耳鼻科で耳管開放症に対する手術を受けたが未だに症状は多少残存しているという。
     背もたれ車椅子が必要だが、現在も月一度、奥さんの車運転で元気に通院してくる。通院の折に少し寄り道してあちこち出歩くのが楽しみ。そろそろ紅葉の時期、近いうち、紅葉狩りを楽しみにしているという。

2012年10月17日水曜日

[Med-REHA] 障害と闘って生き続ける

      Y氏は20数年前まで、当時の建設省に勤める優秀な青年であった。1991年11月末、勤務先で突然の意識障害を来して救急病院へ搬送、左内頚動脈瘤破裂によるクモ膜下出血と診断された。入院時の血管造影中、動脈瘤再破裂を来して左側頭葉から前頭葉底部に血腫を形成し緊急手術となった。一命は取り留めたが、重度障害を残して故郷に帰省した。当時34歳であった。

           帰省後、私の務める脳卒中センター・リハビリ外来に紹介されてきた。何を訊いても緘黙状態だが簡単な理解は可能、運動麻痺なく、独歩も可能であった。しかし指示された動作が理解出来ても、その開始や途中に動作そのものが中断することしばしばで常に第三者の援助が必要であった。一方、不思議なことに自転車に乗るなど、それまで獲得されていた行為・動作は可能で食事も一人で摂取できた。

特異な前頭葉性運動障害・抑制障害と発声発話障害、知的障害

     以来、私と彼との20数年にわたる長い付き合いが始まった。意図した発声や行為が困難な一方で、日常の定型的動作は可能なことから施設などに入らず実家で生活を続けた。時に一人で街に出かけて商店の品を持ち帰ろうとして、警察のお世話となる事もあった。特異な運動障害(意図と自動的行動の著しい解離や、系列行為の中断・停止、など)や緘黙状態はほとんど改善しないが、最近となって簡単な挨拶など、早口で聞き取りにくいが可能となった。

父の重なる病気や骨関節疾患で在宅療養生活危うし

     Y氏の父Kさんは農業で生計を立てるが、糖尿病や高血圧があり、そのため軽症脳卒中に罹患、軽い構音障害や右手の障害を来して、以後Y氏受診の折に私の外来診察を受けるようになった。その生活習慣病管理や軽症脳卒中後遺症は良くなったが、その後若い頃からの無理がたたったのか、両膝や股関節に多発性変形性関節症を合併、術後の感染併発治療を含めて再三手術を受ける結果となった。屋内も両手に杖を持たないと移動が困難となった。

通院継続は無理かと思われた

     これまで父Kさんの自動車運転で外来通院していたY氏の通院は無理だろうと思っていた。父Kさんの整形外科入院中、Y氏は実姉が付き添って外来に来ることもあったが、その間隔は拡がっていった。Y氏の今後の通院はもう不可能だろうと思わざるを得なかった。

     朝夕の冷え込みで煖房が恋しくなる頃、Y氏のクモ膜下出血発症から21年目を迎えようとする時期となった。両手に杖を持って、たどたどしい歩き方をする父KさんとY氏が再び私の外来にやってきた。父Kさんは重機を動かして農作業にも復帰し、車の運転はオートマ車で可能だという。

「息子の事を考えると、今の状態で死んでられない、脳卒中再発がもっとも怖い、先生、何とか助けてくれ・・・」

     障害を持って年々齢を重ねるY氏、その息子の行く末を案じながら、自分の負った障害と闘う高齢の父Kさん、自分の出来る事は限られるが何とか応援し続けたいものだ。

2012年10月15日月曜日

[Med-REHA]認知症病棟紹介入院の危うさ

    80歳過ぎのAさんは夫婦二人暮らしとなった頃から身勝手な行動が目立ち、近くに住む次男夫婦ももてあまし気味であった。夫が施設入所して一人暮らしを始めたが、身の回りのことは入浴以外可能であった。入浴は介護ヘルパーを利用していた。その後序々に火の不始末、服薬の管理や定期的服用が出来ない、介護ヘルパーへの暴言や暴力、物盗られ妄想などがみられるようになり、この9月には自宅の池州でおぼれそうになるなど、眼離しがきかない状況となった。緊急的に小規模多機能施設へ入所した。ここでもトラブルが続き、家族・ケアマネ・かかりつけ医との相談結果、認知症周辺症状の調整目的に当センター認知症病棟に医療保護・紹介入院となった。

入院直後に判明した腹部症状と異常所見

      入院時、両耳難聴で意志疎通が一部困難だが、声を大きくして話すとコミュニケーション可能で指示に従い、診察やその後の検査も一応可能であった。

    入院時診察と検査で、難聴による意志疎通困難を伴う中等度認知症(アルツハイマ-病?、前頭側頭型認知症?)と診断。さらに採血検査では白血球増多と炎症反応陽性、視診で下腹部膨満あり、腹部X線写真で回盲部から大腸全般にガス像が観察され、回盲部には糞液のニボー形成がみられた。

     入院後、排便あり食事も可能な事から経過観察となった。一方、入院したその日に窓から逃走を図るなど、精神症状や問題行動が目立って、その周辺症状管理に関心を奪われていた。

夜半から悪化した腹部症状

    夕食も5割以上摂取。しかし夜半より元気がなくなり、下腹部膨満と触診で回盲部付近を中心に下腹部全体の圧痛あり、発熱もみられるようになった。腹部蠕動音亢進なく、向精神薬服用の影響や糞便性イレウスを考え、浣腸したが廃液のみ。

早朝、救急病院外科へ転院、手術で救命

    翌早朝には腹部膨満や圧痛が増悪したため下部消化管の閉塞性イレウス、急性腹症として救急病院外科に紹介転院した。これまでの経緯から家族の連絡対応が遅く、ヤキモキしたが同日昼には緊急手術となってショックとはならず一命を取り止めたらしい(その後の詳細は家族の説明のみで不明)。

    本人が自覚症状をうまく訴えないこと、前景に立つ認知症症状に惑わされて、背後の問題を見逃し対応が遅れる可能性があること、このAさんの例は、紹介入院となる認知症患者の抱える危うさを知り、その後の対応を考える上でとても教訓的なケースであった。

2012年10月13日土曜日

[Med-REHA] 当リハセンター、最近の脳卒中地域医療連携実績


連携実績1

 10月20日に地域連携シンポジウムを大仙市大曲で予定

           今月20日に予定される大仙・仙北医療圏、連携協議会シンポジウムに向けて回復期病棟師長にこれまでの実績をまとめてもらった。
連携実績2             平成22年1月から開始され、本年6月までの29ヶ月間で3カ所の急性期病院(仙北組合総合病院・平鹿総合病院・雄勝中央病院)から155名が対象となった。連携開始当初は回復期病棟の受け入れ能力もあり、対象者を絞った。しかし対象限定はやはり不評で、途中から適応を広げている。パスによる連携を円滑に進める目的で定期的に集会を持ち意見交換し、相互理解や相互信頼、問題点共有がなされている。急性期の栄養維持への配慮で、回復期転院後に状態不良で訓練開始が困難な例は減少している印象。秋田県南をカバーする当リハセンター回復期病床数は50床に過ぎず、患者の流れには急性期・回復期のミスマッチもまだまだ多いようだ。この間のパス利用者は残念ながら入院脳卒中患者の2割に留まっている。

クリパス対象患者の90%が自宅退院

連携実績3クリパス対象患者は入院時点での機能レベルが高い。結果としてその自宅退院割合が高く、自宅退院患者には退院後に当リハセンター地域医療連携相談科からスタッフが自宅訪問する。退院前のスタッフによる在宅環境評価訪問もあるので退院を挟み前後2回の在宅訪問がある訳だ。患者・家族の評判もよい。

転院依頼から回復期入院までの期間短縮

またパスが導入された効果として、転院依頼から回復期病棟入院までの期間が相当短縮した。連携を積極的に進める病棟スタッフの努力を多としたい。

2012年10月12日金曜日

[Med-REHA] リハセン15周年講演会は職員一丸となり大成功!!


    去る10月6日土曜日、3連休初日に秋田市内ビューホテルで開催した、“リハセン開設15周年記念講演会”は、会場を溢れる300名近い来場者を数えて成功のうちに終わりました。一般の方が4割、医療機関や介護施設関係者が4割で、センターの患者さんやそのご家族も来場されていました。

    限られた時間でしたがイベントブースでデモや医療介護相談も企画され、多くの方が興味深げに立ち寄られていました。

    講演は小畑信彦病院長の「うつの話し」、佐藤隆郎認知症診療部次長の「認知症について」、特別講演として佐竹秋田県知事の脳卒中体験にもとづく講話、そして小生の「今どき、リハビリ~何が変わったか?」でした。終了後のアンケートの感想ではイベントブースでのデモや相談コーナー、記念講演いずれも好意的で同様の企画を今後とも望みたいという方々が多くおられました。

    行事の企画運営にはHK先生を筆頭に日常業務の中で時間を惜しんで当たられ、本当に御苦労様でした。

2012年10月11日木曜日

[Med-REHA]AMI人材育成セミナー・リハセン現地研修


秋田県企画振興部学術国際局学術振興課主催で

    平成24年度医工連携人材育成セミナーが9月25日から行われています。その現地セミナーとして10月10日、県立リハセンを会場に「リハビリテーションで使用されている医療福祉機器」をテーマに13名の受講者が集いました。

訓練室実地見学前のレクチャー

    小生から最初にリハビリに関する基礎知識を含めてオリエンテーションを行いました。リハセン現況からみた取り扱い患者全般の傾向やプロフィール、リハビリテーション技術や機器導入による最近の進歩、そういった技術や手技が導入されても最終的には対象患者さんの意欲や動機の有無が最終的に大切であること、などをお話ししました。

訓練室での見学と意見交換はとても有益だった

    訓練室では作業療法全般の説明と見学、当センターAS医師が開発した上肢訓練ロボットの説明とデモを行いました。このデモでも機械工学的観点から様々な意見も出て、AS医師の顔はやや紅潮気味。さすが工学畑のプロが多いなあという印象。理学療法室では先進技術であるロボットスーツ・ハルのデモを行いました。技術屋さんが発する質問や意見は普段訊くことがないだけにとても新鮮な印象。

何が求められ、何が必要とされるのか、そのヒントは?

   最後の全体討論では、STのNA室長から主に発達障害を含むコミュニケーション障害でその訓練や生活に必要な補助具について、既存の市販製品が高価過ぎること、目的に合った製品が意外になかったりすること、などが提起。それに対する参加者から様々な意見が飛び出して活発な意見交換がなされました。参加者も、そして準備にあたった小生を含むリハセンスタッフも、とても勉強になった現地研修の一日でした。

2度目の真昼岳です ~ブナ林が最高でした

   10月初旬の3連休中日7日、美郷町赤倉口から7年ぶりの真昼岳に登りました。2005年の真昼登山は、初夏の頃でデジカメには沢山の色鮮やかな山野草が写っていました。

  

  今回は、残暑の影響で紅葉未だの時期。狭く長い林道を車で往き、登山口へ。赤倉コース始めは滑りやすい沢伝いの道。ここを過ぎて出くわす一面のブナ林には感激。木漏れ日に照らされる木肌が直接匂ってくるようです。その後もずっと緩い傾斜道で、コースの多くは狭く滑りやすい足場の悪い道が続きます。ロープを張った急峻な斜面の所もあり、注意が必要。

  天候に恵まれましたが、山頂からの視界は今ひとつ。頂上付近は笹藪多く、この時期の彩り添える紅葉は未だ。みられるお花も、リンドウ、トリカブト、アザミの紫がやや目立つ程度。

  下山は転倒しないように細心の注意を払いながらの長い道のりで、とうとう足首が疲労して足下がフラフラ。でも下山後の六郷温泉、多少熱めのお湯でしたが最高でした。

2012年10月2日火曜日

[Med-REHA] リハビリ入院患者の栄養障害

   この頃、リハビリ病棟に入院してリハビリを受ける患者さんの栄養障害が気になります。地域医療連携クリニカルパスで入院する患者さんの中には急性期病院で安静と意識障害下での誤嚥を恐れて十分な経口栄養が出来なかったりで、発症後に急激な体重減少を来している例がありました。最近では連携での話し合いの中で体重管理に注意を向けるようになり、このようなケースも減少しています。

 

栄養不良で入院する患者はそれでも多い

   リハビリ目的で紹介・入院となる患者さんは、リハビリを必要とする主病名のほかにたくさんの保険病名を付けられて入院治療を受けています。必要な薬を出し、必要な治療を受ける上で適切な病名がないと診療報酬がもらえません。中には入院中の病名が100を超える方もおります。

入院中保険病名1人当たり、回復期12、療養23

   保険病名は、背景疾患、併存疾患、入院中の感染症、その他、ですが、最も多いの入院後に判明した既存疾患です。なかでも栄養障害によるビタミン欠乏などが目立ちます。

高齢者や障害者は嚥下障害による栄養障害が問題

   生活習慣病による脂質代謝異常や肥満が問題とされることが多いのですが、高齢者や障害者では嚥下障害など隠された障害による栄養障害がもっと問題となるのです。

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