「倒れもタダでは起きない」や「何でもやってみよう」という精神が好きです。私も私の患者さんも長いおつきあいの中で互いに齢を重ね、加齢に伴う様々な幸・不幸を経験するようになりました。以前は"脳卒中患者は癌にならない"と言われていたのに、治療の甲斐あって長生きしている私の患者さん、今度は検診でみつかった癌に悩まされるという構図なのです。不自由なからだで日常生活での運動もままならず、廃用による足腰の痛みをいつも訴えていた患者さん、今度は癌の告知を受けての悩みなのです。脳卒中後、機能を回復されても以後の地道なリハビリがなければすぐに元の木阿弥。ヒトに知った顔をして忠告するのは簡単でも、自分の弱さを見つめることは難しい。リハ医の禁句は患者さんに“ガンバッテ”を連発すること。患者さんに相対するときはその言葉に耳を傾け、共感し、体験を通した言葉で次になすべきことを自分で判断されるように心がけています。
さて、昨年はリハセン独法化一年目で様々な事が重なり、本当に多難な一年でありました。リハセンを私の患者さんにみたてれば、まさに脳卒中となって気弱になって、新たに癌が発見されたような状況でした。「セレンディピティ」とは、不運を幸運に変える力、「インセンティブ」とは如何にやる気を起こすのか動機付けのことです。常日頃、私の多くの患者さんからこの「セレンディピティ」と「インセンティブ」を学んでいます。また、最近読んだ本*には、最も有効にヒトを行動に駆り立てるものが具体的に整理され、興味深く読みました。今年も我々を取り巻く社会状況の中で、この「セレンディピティ」と「インセンティブ」とを意識した姿勢と行動が求められています。
新年に当たって二つの言葉を紹介し、新年の挨拶に代えました。今年はリハセンにとって、また皆々様にとって良い年でありますように。
*タイラー・コーエン著(高遠裕子訳):『インセンティブ 自分と世界をうまく動かす』日経BP社2009年
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