2022年1月11日火曜日

[IS-REC/ISSUES]『腰椎椎間板・左横ヘルニアにやられた』

 ●密かな自慢、運動習慣

   秋田に居た頃からの運動習慣は由利本荘市に転居してからも続いている。秋田では夕食後ひと休みしてからセントラルスポーツのジムで汗を流していた。由利本荘では夜遅くまで出来るスポーツジムがなく、自宅に小さなトレーニングルームを作りトレッドミルで走るのを日課とした。またウイークエンドは本荘大堤から水林に抜けるハイキングコースを通り、子吉川河川敷に沿って薬師堂踏切を超え自宅に戻る10数kmのウォーキングコースをオーディブルを聴きながら歩く。結構の運動をこなしているつもりでもやはり歳には勝てない。体重は変わらないが筋肉量が減って、めっきり寒がりになった。そこでこの春からダンベル運動などの時間を増やした。

●ヘルニアの前兆

   筋トレメニューにその場ジャンプや踵(かかと)落としも良いというので、これらも普段の運動に取り入れた。ところが、この7月頃から運動と関係なく平時の歩行中、左足を挙げた時(遊脚期)、左鼠蹊部を縛ったような感覚に陥り、また大腿から下腿の前面、足背に灼熱感を伴う痛みが出現した。この症状は左足だけに時々起こり、右足になく、また腰痛はほとんど生じなかった。中通病院の親友に相談した。末梢循環障害ではないかという。そこで早速、血圧脈波検査を受けたが、ABI1.12で末梢循環障害は否定的だった。その後も同じ程度の症状は時々あったが日常生活に影響するほどではなく運動も続けていた。

●腰椎MRIで“L4/5・L5/S1左横ヘルニア”

  9月半ばから起床時の左足のこむら返り、歩行時の左下肢の痛みが増悪した。最も困ったのは階段昇降時に痛みで足を宙に浮かせず、足先が段差で引っかかる事だった。もっぱらエレベーターを使うしかなかった。自院の整形外科S先生に相談した。診察の上、すぐに腰椎MRIがオーダーされた。その結果は、L4/5、L5/S1の腰椎椎間板左横ヘルニアによる椎間孔狭窄症の診断。灼熱痛はL5デルマトームと一致していた。まず神経障害性疼痛に対してタリージェ5mg2錠から開始となった。

●椎間板ヘルニア症状を実体験する

   痛みは診断が確定した心理的影響もあって、常時感じるようになった。そして組織損傷と釣り合わない疼痛や異常感覚(灼熱感)など、これが神経障害性疼痛というものか、と納得した。タリージェを処方してもらいその鎮痛効果はあったが、仕事を休まず続けていたため、そのほかの鎮痛剤も併用した。しかし腎障害少ないカロナールを含めてnsaidsは無効、セレコキシブも気休め程度だった。痛みがあると、仕事に集中できず、また患者さんに笑顔で向かえなくなった。手術も考えざるを得ないか、と暗い気持ちになっていった。

●自然回復を促す運動・廃用の回復

 改めて文献や教科書で椎間板ヘルニアの治療と予後を調べ、またネットでの検索も行った。福島県立医大・整形の菊地名誉教授や紺野慎一教授は「多くの場合、6カ月程度でヘルニアは自然になくなる」と述べており、この観察を信じ、さらに自然回復を促す運動、運動習慣を一時中断したことによる廃用の回復を図れないものか検討した。なかなかその方面の情報はない。そこで痛みをコントロールしながら主にロングウォーキングを再開した。ジャンプや踵落とし、腰の運動は怖くて出来なかった。筋トレを休み運動量を減らしたことで、これまで体重を落とせなかったのが1kg以上減って60kgを切った。これはやはり筋肉量が落ちたせいなのだろう。筋肉を落とすのは簡単でも増やすのはなかなか大変なことを改めて実感した。

●運動でヘルニアは起こるか?

 教科書やネット検索で椎間板ヘルニアの原因を調べるとおおよそ、“スポーツ、不適切な荷物の持ち上げ、長時間の座りっぱなしなど、背骨に負担をかける不適切な動作を繰り返すこと”とあり、想像通りであった。しかし紺野慎一教授は、“スポーツは、直接的には関係しない”、と述べ、またヘルニアがあっても症状が出ない場合もあり、症状出現には神経への圧迫の強さ、仕事上の満足度の低さ、そして、うつ・不安・ストレスなどが関係しているとしている。

●症状消失とヘルニア再発を予防するには・・

   タリージェは有効であったが日中の眠気が強く、また動作時のめまいも起こるようになり、早々に中止した。幸い、薬を止めても痛みを含むヘルニア症状は徐々に改善して消失した。11月には痛みや異常感覚は全くなくなり、主に筋力低下による歩行、特に階段昇降時の擦り足が問題であった。その擦り足も運動、特にトレッドミルや週末ロングウォーキングの再開で大分改善している。私の場合も症状出現にヘルニアによる直接神経圧迫以外の周辺要因があったのだろうか? 再発予防にはやはり“心の健康”が大切なようだ。

秋田県医師会報NO.1956(2022年1月号)『新春随想号』pp53-54、から転載

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