治療の体験記を病名から探せる 闘病記ライブラリー:
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入院患者さん向けライブラリーに関わっている。職員からの蔵書が大半だが結構立派なライブラリーに成長している。しかしライブラリーに欠けていたのは、患者さんに最も必要なはずの闘病記。WEBにはこの闘病に関して、様々な書籍紹介がある。そこで数年前、WEB紹介図書を参考に、入院している患者さんに関係深い疾患、脳卒中後遺症や統合失調症、うつ、などの闘病記をまとめて購入した。この当時と比べると今は闘病に関係するWEBやブログもずいぶん増えた。上に紹介したWEBも関係書籍が書棚形式で沢山並べられていてとても探しやすい。しかし最近出版されたばかりの松田津佐子さんの本は未だ見当たらない。
さまざまな試練・困難あっても、あの明るく負けない性格、強さは彼女の医療者としての経験から来るのだろうか?
本書はじめの部分で触れられるように、松田さんは助産師として働きはじめ、その後、地元に戻られて助産師を続けていた。しかし病院の産科閉鎖に伴い、余儀なく助産師から看護師に代わって働き続けた。彼女はまさにたくさんの臨床経験を積んだベテラン中のベテラン医療者だった。病院再編や医療スタッフのリストラ等々、厳しい状況の中で過労によって松田さんは病に倒れた。右被殻出血。その急性期治療後にリハビリ目的で我々のセンターへ入院。その入院前後、私の知人でデイ・サービス施設を運営していたYさんから紹介あったこともあり、松田さんとはそれ以来ご縁となった。松田さんは重度の障害やその後の度重なる新たな病魔・障害との闘いに関わらず、私とのやりとりの中で決して泣き言一つ言わず、あの天性とも言える明るさを失わず今日に至っている。リハビリ兼ねて、私にはまめに四季折々の自然や野花を絵葉書にして送って寄越す。その出来映えはとても不自由な両手を使って書いたとは思えない。本書の闘病経過で書かれているように、彼女には息つく間もなく多くの試練が重なった。にもかかわらず、あの何事にも負けない強さと明るさ、あの強さと明るさは自身が病前に経験された多くの患者さんとのやりとりで培われた医療者としてのそれなのだろうか?同僚や身近な人たちに支えられて
医療者を含めた多くの人は、障害を抱え、身の回りのこと、普段の起居動作、シモの事など、健康で障害のなかった頃当たり前に出来たことが出来なくなると、人前に出られず閉じこもってしまうのが常。またそういった状況が“うつ”の最大要因ともなる。リハビリに関わる医療者は、“障害受容をすすめる”として、そういった気持ちの克服を援助する。しかし障害の程度に関わらず一度失ったものを再度取り戻そうとする限り、その克服はなかなか難しい。松田さんはその障害ある身体すべてをさらけ出して同僚や身近な人々に接し、結果的に多くの身近な支援者を得た。この実践は家族(夫)の深い理解と励ましがあって初めて可能となったものだ。無論、その背景にはまだ彼女が寝たきり状態に関わらず同室の同じような患者さんに気配りする並々ならない医療者としてのやさしさがあったからにほかならないが・・・・・すべての方々、特に医療者に一読を勧めたい一冊である。
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