●大学同期会
コロナ流行数年前の開催以来5年以上を経て、つい先頃大学医学部の同期会が開かれた。卒業から半世紀近い年月を過ごし古希をとうに越しているにも関わらず同期入学・卒業の半数に近い面々が元気に参集した。個々人のスピーチは卒業後の足どりと近況が主であったが、多忙さから一段落した我々の年齢では仕事以外の趣味やボランティア活動に触れた内容も多くなった。世代は皆一様なのだが仕事以外のそういった話はつい熱が籠もって若さを感じる。そして学生時代の生活からは想像に難い多彩な趣味やボランティア活動に打ち込んでいる旧友の話を聞くと、自分もまた楽しく、誇らしく思ってしまう。体型や風貌は人それぞれで大病を患った話も聞いたが、それとは別に何かに打ち込んで生活している姿にはつい若さと元気を感じてしまう。そして仕事に振り回されず自分の好むところに打ち込める時間や期間、空間は既に限られているだけに多忙極める自らの現在の姿を恨めしく思ったりもする。●趣味の遍歴
時間の多くを仕事に費やす生活は職業柄、致し方なかった。しかしこれまで仕事一筋だったかと問われれば決してそうではなかった。仕事に利用するとの口実で、パーソナルPCやワープロはそれが出始めた頃から嬉々として使っていた。デジタル原稿や学会スライド作成、また症例データベースの作成、健康ドック対象者のカルテ作り等も手がけて結構楽しんでいた。また、“ノマドワーカー”よろしく、デスクトップPCやノートPCを何台も揃えて同一環境を構築して仕事をこなし悦に入っていた。そのうち、自作PCに凝りだし、マザーボードと筐体をあれこれ組み合わせ最速・最強PC作成に打ち込んだ。昔は脳外科医としてマイクロサージェリーを行ったが、歳とともに視力は衰え、マイクロの眼も指先もすっかり駄目になった。自作PCの細かい作業はもう困難となった。●健康管理とガジェット
歳をとって生活習慣病に悩まされることが多くなった。リハビリ医となって、一般の方々や患者さんに健康講話をしたり、診療場面で生活上の健康アドバイスをする。自分の健康管理もできないで患者の指導もないだろうと、健康関連の本を読み漁ったり、雑誌や新聞の切り抜きをするようになった。紙媒体のデータベースをPC上に作り、それを機会ある毎にスライドや講話にまとめた。自分の趣味との接点では、体重や血圧・脈拍、運動指標の歩数・歩行距離・消費カロリー・脂肪燃焼量など記録するようになった。記録手段はノートなどに書き留めるのではなく、測定機器から直接スマホに記録する方法で、データを一括管理できるように測定機器は概ねオムロンに統一した。数年前、クラウドファンディング(CF)で理論上、経皮的、非侵襲的に血糖を持続モニタリング(CGM)可能なことを知り、そういったスマートウォッチ型の機器開発が手がけられていることから早速CFに応募した。見本も完成していてすぐにも実用化されるものと期待した。しかし精度管理上の問題がクリアできないらしく3年以上も経った今もも市販はされていない。●持続血糖モニタリング(CGM)
糖尿病管理や食事管理、体重管理には持続血糖測定(CGM)が有効である。スマートウオッチで非侵襲的にCGMが可能となるのを目前にしている。しかしそれを待ちきれずにCGM可能なFreeStyle Libre(Abbott社)とNight Rider(Ambrosia社)を使ってCGMを開始した。スマホとスマートウォッチに同時に5分毎の血糖値が数値やグラフで確認可能である(写真)。食後高血糖や食べ過ぎの高血糖時間間延長、長時間運動時の低血糖などをスマートウォッチで簡単に知ることができる。高血糖や低血糖のアラームも可能である。●スマホからスマートウオッチへ
スマホについてはいつしか人並みに携帯電話やメールのやり取りに使い始め、現在はさまざまな辞書機能・治療薬・臨床ノートの参照機器として、趣味より仕事や日常に欠かせないツールとして使用している。一方で活動量測定など、健康機器として使い始めたスマートォッチは、機能が飛躍的に進歩して、その便利さ、多機能さから今の自分をまったく虜にしてしまった。今、同系統機種の最新版「TicWatch Pro 5」を使用している。シンプルで見やすいなデザイン、快適でサクサクした操作性はまさに遊び心をくすぐるガジェットである。Wear OSの機能で必要な機能のインストールも可能で、定番のスケジュール機能と付随するリマインダーやアラーム機能、メールやニュースの通知機能など、ポピュラーな機能の視認性は当ウオッチが抜群である。健康管理機器として不整脈検出可能な脈拍・心拍数計測、酸素飽和度などがあり、基本的なバイタルチェック、体調管理に活用している。またスポーツウォッチとして運動種目に応じた運動量測定が可能で体操や筋トレ・トレッドミル走など、楽しさより継続に多少の努力が必要な運動にもモチベーションを維持する役割を担ってくれている。スマホを鞄やポケットから出し入れするのは格好よいものではない。スマートウォッチをそれとなく眺めて時間や情報を確認したり、アラーム機能をセットしてスケジュールを時間通りに行動する。私お好みのスマートウォッチは仕事と両立した上に自分の遊び心を大いにくすぐる必須アイテムである。(本稿は2024年1月、秋田医報NO.1620「新春随想」に掲載した)
(写真説明)スマートウオッチの持続血糖モニタリングの表示結果画面. 5分おきに血糖値がグラフと値で表示されている. |