超高齢者の胃瘻造設依頼が増加している.ムセや咳き込みで食事が摂れず栄養障害を来した例、食事介助で誤嚥を繰り返し喀痰喀出困難となった例など、その多くは施設利用中の患者さんで施設職員が対処に困り果て紹介となったケースである.一方、在宅療養中の高齢者が自ら嚥下困難で来院するケースはすこぶる少ない.また意を決して来院した場合でも症状が相当進行しており短期の外来対応では困難な場合がほとんどである.生活体力や生命維持に必要十分な栄養を確保するにはたとえ一部の食材を選択して口にできても胃瘻という代替栄養路も併せて必要な場合が多く、入院治療が必要なことを説明する.しかし多くの患者は事の重大さに関わらず即座の対応を拒否し結局、誤嚥性肺炎を繰り返して急性期病院に入院する事となる.
●嚥下障害入院の現状
摂食嚥下障害を主病名の一つとして当院に入院した患者さんの退院時予後を検討した.2022/10/01~2023/10/31までの13カ月間、該当する入院患者60名.嚥下障害・栄養障害への主たる対応は、経鼻胃管13、嚥下困難食による対応11、維持的静脈栄養4、胃瘻造設9、対症療法(看取り・早期死亡)23である.嚥下障害・栄養障害で積極的対応が出来なければその多くが死に至る結果であった.また継続入院例を除く入院期間は2~156日(中央値51日)で治療法によらず入院が長期化する傾向であった.胃瘻造設9例でみると栄養管理の問題が解決しても夜間喀痰吸引の必要などで施設再入所が困難となり退院が決まらない場合が多い.
●胃瘻造設が生命予後・QOLを維持改善した例
(1)ケースKS(PEG当時78歳・女性)
一人暮らしで以前から誤嚥による肺炎を繰り返し、肺膿瘍を合併した.由利組合総合病院で胃瘻造設を含む治療を受け、その後の嚥下を含む訓練を希望して当院入院となる.嚥下評価の結果、食品の適切な種類とその形態で経口摂取可能と判断した.補水と内服のみ胃瘻を利用し嚥下訓練後、施設入所となった.その後、経口摂取継続と補水・服薬のみ胃瘻の方針は変わらず、約10年後の現在も家族に連れられて定期的胃瘻ボタン交換目的に当院外来を受診している.
(2)ケースTS(PEG時74歳・女性)
パーキンソン病でくも膜下出血を併発した.経口摂取困難で胃瘻造設となり、治療継続目的に紹介された.嚥下評価の結果、補水と内服薬のみ胃瘻から投与となった.維持的訓練を継続し歩行器歩行可能で、日中は車椅子に座りデイルームで趣味の読書やスケッチをしていた.その後パーキンソン病の進行で寡動・振戦が悪化し、3年目に鬼籍に入った.
(3)ケースTA(PEG時85歳・女性)
アルツハイマー型認知症で陽性症状が強く菅原病院入院中であった.転倒骨折して寝たきりとなり当院へ転院となった.簡単な意思疎通可能なほかは、食事を含め介護抵抗が激しかった.家族の希望も強く胃瘻造設による強制栄養となった。家族とのやりとりや手を握り視線を合わせたスタッフとの対話は意外に大人しく対応し、結局老健施設入所退院となった.その後、家族に連れられ定期的に胃瘻ボタン交換に外来を受診していたが、約6年目の本年91歳で死亡した.
●終末期医療ではない胃瘻造設
“食べる・呑む”機能=摂食嚥下機能も加齢に伴って徐々に低下する.いわゆる口まわりの衰えであるオーラルフレイルの時期から予防が大切であるが、脳卒中や神経筋疾患、認知症でない限り、相当高齢となるまで摂食嚥下機能は保たれる.したがってひとたび“食べる・呑む”機能が障害されると、終末期としてその積極的対応を放棄する場合が多いように思われる.胃瘻造設は口から食べることを排除するものではなく、食種や食形態を選んで継続も可能である.本人や家族が望むのであれば、生命予後・QOLを維持改善する手段の一つとして胃瘻を検討して良いのではないだろうか.
