医療現場・医療職のワークライフバランス
ここ数年、医療の職場でもワークライフバランスを考える管理職研修や職員研修が多い。仕事の性質上、勤務時間に関わらず患者さんの状況次第で終日病院に詰めているのが当たり前のように何となく思い込んで仕事をしてきた。
自分がそういった行動を取るのはまだしも、管理職や上司として他の者にそれを強制するような思いもあった。しかしこのワークライフバランスが医療の現場にも普及して他のスタッフへ何気なく時間外の仕事・業務を強制してしまうことは勿論あってはならないし、自分にあっても仕事と私生活を割り切って考えるようになった。それでも、気になることがあれば仕事優先でつい最近まで家族に迷惑をかけることが多かった。
退職して職場が変わって
同じ医療の現場にあっても、歳を重ねた老齢医師の多い今の職場はさらにこのワークライフバランスを割り切って実践しないと、到底やってゆけない。高齢・重症者の多い病棟もあって、受け持つ患者は毎日のように最後の看取りが必要となる。また容易に合併症を起こして重症化する。こういった状態に担当医がつきっきりで対応したら、とてもやってゆけなことはわかっている。そして医師は皆すっかり割り切って時間内の仕事にのみ専念し対応している。最近は私自身もそれで良いのだと思うようになった。
本書『ドイツ人はなぜ・・・』で知った日本とドイツの違い
欧州、特に私の知るドイツやスェーデンで生活すると、本書に強調されているように、企業で働く彼の地のサラリーマンはしっかり有給休暇を取る。医療の現場でもそれは徹底していて日本では考えられないような長期休暇を取っている。
本書では医療現場については全く触れていないが、ドイツのさまざまな生産現場や企業で働く労働者が有給休暇を当然の権利として消化している一方、仕事はそれなり十分回って、ドイツ経済は黒字続きの絶好調であることをことを述べている。日本人の勤勉さと日本経済の現状からその違いは何なのか?日本の労働者もドイツ同様のワークライフバランスを徹底して経済を維持・発展することが可能なのか?そういったドイツの現状の謎解きをしながら、日本の今後のあるべき姿を提案している。
ドイツの労働生産性は日本の1.5倍、その背景に「社会的市場経済」あり
ドイツもさまざまな試行錯誤を繰り返しながら、国の政策として労働者の権利を保護する政策が取られてきた。労働者の生活の安定と秩序の維持に、労働者もまたさまざまな形で経営に参加する仕組みを作り、結果的に個々の労働者自身の生産性も向上しているという。
税金や社会保険料でドイツ国民の可処分所得は少ない
スェーデンほどではないにせよ、ドイツ国民も手厚い社会保障や労働者の権利保護のため、税金や社会保険料は日本より高く、そのため彼らのサラリーのうち、可処分所得は相対的に少ない。一方でその貧困率は日本よりずっと低い。この結果でもあるが、いわゆるサービス業でのサービスに対する考え方の落差が日本とドイツでは相当違いがある。
週末には商店街がすっかり閉じ、またホテルやストアを利用したときの接客態度の悪さは日本でのそれと比較してあまりにひどい。細かいサービスよりコストの安い方が理に適っているのだ。
日本もドイツのいいとこ取りを!!
GDP至上の考えがそれとなく著者にはあるようで、それには賛成しかねる。
しかし高学歴の移民を以前から多数受け入れ、最近は労働力としての移民も多く受け入れるようになったドイツの積極的姿勢は同じ少子高齢化の問題を抱え、また経済が傾いてワークライフバランスを考えるゆとりもないように見える日本も見習ってしかるべきだろう。著者の言う、このドイツのいいとこ取りは、日本でもっと進めなくてはならない。
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