寿命の分子生物学を語る、サイエンス・ライター・杉本先生の新書をようやく最後まで読んだ。
何冊かの本を並行して読んでいると、内容が濃いだけについついこの本が後回しとなって、結局読了まで一と月以上をかけてしまった。
“佐藤 優流読書術”その熟読法からすれば、まだまだ読みは足りないだろう。しかし同じ所を何度も読んで、その都度納得を深め、新たな発見をし、そして自分の目下の関心領域であるアンチエイジングの知識整理が確実になされていった。
アンチエイジング医学は長寿科学(医学)の別表現であり、いわゆる健康寿命を全うする手段を研究し、その具体的ノウハウを提供する。この本ではヒトの長い歴史の中で長寿の限界が過去であれ、サイエンスの進んだ現代であれ生物学的ヒトの寿命が120歳に変わりのないこと、その長寿の鍵は外的環境(家族・社会・医・薬・食)と精神(心)、そして身体の問題として分子生物学的レベルで細胞中ミトコンドリアや細胞の再生修復に関わるテロメアにあることが最初に述べられている。後章は順次その解説となる。
最初に長寿命を全うするには免疫機能による生体防御機構が十分発揮される必要のあること、次に細胞の再生と修復が円滑になされるために放射線や酸化ストレスから遺伝子を守る必要のあること、次に目下、ヒトの死因第一位である、がんを如何に体内に発生させないか、また発生してもうまく自然修復機能を働かせて消滅させるにはどうしたらに良いか?が語られる。次にヒト組織・細胞レベルの再生機能と再生医学の話、再生医学の展望はどうか、などが整理されている。最後に寿命を延ばすライフスタイルとして、身体素因に加え心の問題が長寿命に如何に大切かを強調する。ペットの癒やし効果、性格要因や“健全な精神”の長寿に果たす役割、積極生活を促す街づくりが大切な事を強調して最後を締めくくっている。内容は盛りだくさんだが長寿やアンチエイジングの基本は意外に単純なのだということがこの本で得た私の結論である。
最近、核遺伝子ではないミトコンドリア遺伝子の導入による治療技術が開発され話題となっている。こういった技術開発や応用があっても、ヒトの最大寿命は今後とも変わりないことだろう。
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