「なぜ民主党・鳩山政権はかくも簡単に瓦解したのか?」この疑問が本書を知るきっかけだった
WEB紹介記事でたまたま見かけた本書の著者、矢部宏治氏と鳩山友紀夫元首相の座談記事が本書を読むきっかけだった。 当時の鳩山首相は沖縄普天間基地移設について「最低でも沖縄県外」を主張、自民党にできない政策を実行する民主党首相として、多くの良心的国民各層からの期待も高かった。しかし、その期待むなしく、真相あいまいなままあえなく内閣は瓦解した。WEB紹介記事ではこの点も話題にして縦横に語られる。そしてこの謎を解きあかす矢部氏の本書を是非読んでみたいと思い、早速ネットで取り寄せた(後で確認したが、書店には本書が山積みされ、私が購入した本書は初版発行から2カ月弱で第5版だった。本書の反響大きく既に相当読まれているようだ)
日本の中学・高校でなぜか触れられない戦後日本現代史の謎が解ける本
近隣諸国と友好関係を築けない日本。そこには国際的に共有できる“正しい歴史認識”が互いに持てない不幸が横たわっている。先般、韓国にてソウルの国立中央博物館を訪れた時、その近現代史から日本に併合された時期の展示がすっぽり抜けていた。戦前の日本軍国主義がもたらした不幸な歴史、“負の遺産”がここにあった。日本の中学・高校での社会や歴史教科書では戦前のこういった侵略国家日本の“負の遺産”について、それなり客観的に記述されている。しかし戦後史に到っては記述もわずかであり、また戦争放棄の“平和憲法”とは相いれないはずの全土米軍基地国家と化している日本の現状を的確に説明する記述はほとんど見かけない。
戦後70年の節目、様々不都合な事実に向き合う必要に迫られる日本
矢部の本書では、日本の外国軍「基地」をなくし、また今の科学では制御できない危険な「原発」をどうして止められないのか、日本の敗戦前後に逆上り、様々な歴史的検証を加えて説明を試みている。現在の日本が未だ事実上、米国の従属国家ないし属国となっていること、そういった2国間関係を敗戦直後、天皇制存続や共産主義革命阻止と引き換えに日本から提案する形で積極的に受け入れてきた事実があること。ドイツと異なって隣国共に納得できる戦後処理を怠った日本が未だ近隣諸国から十分信頼を得られず、米軍が日本から去れば“日本再軍備”の危険もあるとした“瓶のふた”論を根拠に米軍駐留とその日本全土基地化が未だに許されていること。そして日本国民の側からは平和憲法を超越した仕組み(本書では、わかりやすく「原発村」・「安保村」と表現)が戦後史の過程で米軍と政府官僚組織の間で強固に構築され、時の政府でも容易にこの事態を換えられなくなっていること。
”日本の根本問題”を解決する方向性も
本書は引用された資料や証言の出所を正確に記載し、誇張あっても偽りはないだろう。読者は敗戦から今に至る日本の道程が様々みるに耐えない事実の積み重ねで出来上がっていることを知り、幻滅と憂鬱を感じるだろう。
著者はしかしもつれた糸を解きほぐすように問題解決の方向性を示している。今の事態に密接に関係した現憲法のあり方、扱い方については異論もある。しかし本書は、“日本の根本問題”を解決して行く良心的道しるべとなっていることは間違いない。
0 件のコメント:
コメントを投稿