2018年4月25日水曜日

[IS-REC/BOOK]私の読書録から:平岩幹男著 『自閉症・発達障害を疑われた時・疑った時』(合同出版)

その後の人生の「生活の質」を上げるために

小児の発達障害や自閉症の評価やトレーニング、経過観察を診る機会が多くなった。リハビリスタッフSTのMさんが以前から小児の発達障害、特に言語発育遅滞を長年扱っていた関係で秋田県内でも少ない小児の発達障害を評価・訓練してもらえる施設を求めて、由利本荘・にかほ地区に限らず、秋田市内からもしばしば患者さんが紹介されてくる。私が赴任する以前は直接紹介元の医師からSTのMさん宛に紹介状が来ていたようだが原則、医師が最初に診察し、医師の診察と指示の元に評価訓練が開始されなければならないため、赴任した直後からその役目が私に廻ってきた次第である。

紹介状があればその紹介状に基づいて簡単な診察を行ない、診断名を入れて指示を出すのだが、自治体の3歳児・5歳児検診の結果、担当した保健師から紹介されるケースも多い。そのような関係で、急遽、小児の機能性言語障害や発育遅滞・自閉症などを勉強することとなった。
最初に読んだ、一般向けに書かれた中川信子著『発達障害とことばの相談』(小学館101新書)はその入門書として、またそういった子供のアウトラインを知る上でとても役に立ったが、医師、特にリハ医の立場からはやや物足りなさがあった。上京した折など大型書店でそういった類の本を物色し、これぞと思ったのが本書である。著書の平岩先生も多くの子供やその親たちと関わる中で自分なりの発達障害関連の対処法を会得していったと述べており、十分な体験に裏付けられて書かれた本である。“ただ愛情を持って接すれば良い”ではなく、具体的に出来る方法・技術として、“ライフ・スキル・トレーニング(LST)”を実践すること、これは問題を抱えていない子供にも応用可能である、としてその具体を書いている。そして“発達とは”から始まり、“LST”、“運動発達”、“言語発達”、“日常生活”、“発達障害の医療的・療育的対応”と小児のリハ医療に沿った話の展開があり、療育から就学の問題、就学後の問題と章立てを進めている。また本書の中でも、診察医が疾病や障害を十分理解できない時に用いる、“経過観察・様子見”の方針は何もしないことと同じ、そういった態度を厳に戒めている。一般の方々にはやや難しく感ずる所もあるがこういったケースを扱う小児科医やリハ医には優れた教科書である。


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