2013年3月29日金曜日

[IS-REC] 三瓶恵子著『人を見捨てない国、スウェーデン』で次世代の幸福を想う

ここ数年、少子高齢化による過疎地域拡大、医療に象徴される生活基盤崩壊が取り沙汰され、先進国・日本は足下から大きく揺らいでいる。そしてその日本に2年前の3.11、東日本大震災が襲って人心は一挙に明日をも知れない不安な時代となった
“減災”目的ながら、大規模災害を想定した日本沈没のCGが公共放送で頻繁に流され、今にも国土全体が沈みかねない恐怖と悪夢が多くの国民の脳裏に染み込んできている。
そしてつい先頃、国立社会保障・人口問題医研究所から公表された今後30年間の日本地域別将来推計人口のデータもその深刻さを改めて浮き彫りにした。


子や孫、次世代・次々世代に残す“しあわせ”な国を求めて

私自身も実際目の当たりにしてきた、“国民総幸福”を実践しているブータン。『ブータンしあわせ旅ノート』でも紹介したが、その国民の厚い信仰心、国王を慕う立憲君主制の国柄、輪廻転生を信じ、生あるものすべて大切にする国民性、・・・・これら国民の精神性はチベット系のブータン仏教をもとに、その歴史背景や地理的条件と深く関わっており、現在の日本やそのほかの先進国とは大きくかけ離れ、これはまさに別種のユートピアであろう。


福祉先進国、スウェーデンは“人を見捨てない国”

三瓶恵子さんの書かれた本書は岩波ジュニア新書に入った一冊。青少年向け図書としてつい先頃出版された。著者は日本から現地ウプサラ大学留学後、当地で結婚、1981年からスウェーデンに30年以上在住している。本書の「はじめに」では、スウェーデンが教育制度や家庭生活のスタートとなる結婚制度、そして社会に出てからの職業も「一発勝負の国ではない」ことを強調する。「就活」も「婚活」もない。まさに日本に住む我々には想像しがたい現実である。その後の各章では、こういった日本の現実とあまりに違うある種の理想郷がどう実現されているかをスウェーデンの普通家庭で生活する身近な若者達にインダビューする形で紹介している。
国民の高負担で成り立つ大きな政府によるセーフティーネット充実。その人を見捨てる事のない国のしくみを利用できる一員として、家庭の中にあっても、その青少年の早い時期から精神面と経済面での自立が教育されている。男女とも社会で働くのが当然で“専業主婦”のない国、結婚形態は多様であり、従って家族構成も様々。男女の結びつきはあくまで愛情第一で決まり、離婚しても児童福祉制度の充実で子育ての心配も少ない。こういった社会のあり方の結果として、女性の合計特殊出生率は1.9以上である。


どうやったら先進国スウェーデンのイイトコ取りができるか?

人口減少が急速で、世界一の超高齢化社会・日本。30年後の日本はこのままで推移すれば、間違いなくその4割以上が高齢者で、地域崩壊はどんどん進むだろう。近未来も今のままではインフレ・ターゲット、経済成長戦略という国民生活とは無縁な政治の方針でますます暮らしにくい現実が待ち構えている。贅沢な消費生活は誰も望んではいないはず。せめて、子や孫の世代、次世代・次々世代へ戦争のない、豊かな自然と原発災害のような人災ない日本をバトンタッチして行きたい。高福祉・高負担の国スウェーデンは国民の政治に対する関心は非常に高い。そして著者がインタービューした若者達の意見や国の年次報告書をみても国の現在の諸制度に対する満足度は高く、将来不安もずっと少ない。この本を読み終えて、日本人の我々もせめて次の世代のために、先進国にしてひとつのユートピアでもあるスウェーデンをもっと学び、そのイイトコ取りが出来るように、今こそ真剣に考える必要を強く感じた次第である。


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