2014年2月5日水曜日

[IS-REC/BOOK] 太田成男著『水素水とサビない身体』(小学館)を読む

文庫本化された、瀬名秀明・太田成男著『ミトコンドリアのちから』 に触発されて・・・

去年の同じ頃、文庫本化された、瀬名秀明・太田成男著『ミトコンドリアのちから』を読んだ。『ミトコンドアリのちから』は科学的読み物として、また細胞生物学の基礎を整理する本として大いに面白く、かつ役に立つ一冊であり、既にこのブログでも紹介した。その後に著者の一人、太田が書いた啓蒙書『からだが若くなる技術』は、健康指向の一般の方々へわかりやすくその具体的戦略を述べた好著であり、これも後日ブログで続けて紹介した。著者、太田成男は日本医大・大学院教授で本書に自身で紹介する通り、活性酸素のうち、遺伝子や細胞傷害を来すハイドロキシラジカルを“悪玉”活性酸素として紹介し、またその悪玉活性酸素を選択的に消去する作用が水素にあることを世界に先駆け報告した基礎医学研究者である。

水素を体内に取り入れる様々な手法とサプリ

太田教授の発表後、水素を体内に取り入れる様々な手法が考案された。特に水に水素を溶解した水素水が多くのメーカーから市販されていることは健康サプリに関心を持つ者であれば十分御承知のことと思う。本書は身体にとって格段副作用などなく、身体に良いことづくめで、健康指向サプリにありがちな、“過剰宣伝”、“インチキ”、“ウソ”の類に誤解されかねない水素関連サプリを、改めて著者自ら、その後の研究成果の蓄積を踏まえて一般向けに紹介した本である。

“人間がサビる?”=“老化や生活習慣病の原因とされる活性酸素からの害”

ヒトの日常生活に必要な活動エネルギーは食事を通して供給される栄養と呼吸による酸素供給で賄われる。これら栄養器質と酸素の供給を受け、細胞レベルでエネルギー代謝が進行する。その役割を担う場所と構造の大部分が細胞内ミトコンドリアである。その好気的エネルギー産生は身体活動の需要に応じて効率よくエネルギー通貨であるATPを産生することで達成される。このエネルギーはミトコンドリア膜にある電子伝達系を流れる電子の動きによって電気的エネルギーから変換されて生じる。この仕組みの宿命は、エネルギー産生プロセスで漏れこぼれる電子と酸素分子が不可避的に結合して活性酸素を生じてしまうこと。その発生する活性酸素量は急激な活動エネルギー需要の変化で大きく異なるという。したがって日常生活でも急激な運動や大喰いなど、急な活動エネルギー需要の高まりが多くの活性酸素を産む原因となる。

また臨床医学の分野で虚血(脳血管や冠動脈閉塞による臓器の虚血状態)後の再潅流で起こる脳や心臓の臓器障害は大量の活性酸素発生で説明されている。活性酸素は、炎症細胞などでも産生され、一部は異物の排除やその解毒化にも使われる。したがって活性酸素すべてが老化や疾患の原因となるわけではない。

活性酸素のうち、遺伝子や細胞膜を傷つけ老化や疾病原因となるのは、より酸化力の強いハイドロキシラジカルである。体内の細胞や組織に対して強力な酸化作用により遺伝子や膜の傷害をもたらすので、ハイドロキシラジカルを著者らは“悪玉”活性酸素、と名付け、その作用結果を“人間がサビる”と、わかりやすく表現した。

水素の効用=強力な活性酸素除去作用(ラジカル・スカベンジャー)

水素を体内に取り入れると、その分子は最小分子である故に体内組織の至る所、その水溶、油溶に関わらずよく浸透する。そして何らかの原因で組織に発生している“悪玉活性酸素”ハイドロキシラジカルがあると、これと反応して無毒化する。反応に関わらなかった水素は速やかに呼気から排出される。水素の効用はこの化学的作用で簡単に説明されるので、“悪玉活性酸素”が多く生じていない状態で水素はあまり必要ないだろう。しかし、このストレス社会、肥満や生活習慣病が社会問題となる現代では多くの“悪玉活性酸素”が体内に生じて老化や肥満、生活習慣病の原因となっていることは容易に想像される。こういった現代社会では健康サプリとして水素を大いに活用して欲しいというのが著者の主張だ。

水素水が健康飲料として普及する時

水素水飲用は水素を体に取り込む最も身近な方法。しかし健康飲料として利用するにはまだまだ高価なようだ。とはいうものの、飲んで特に害なく、清涼感あって間違いなく健康に良いとなれば、この日本で水道水に代わりミネラル・ウオーターが普及したように、水素水が普及するのではないか。週刊誌などでも取り上げられ、水素水効用がわずかずつ一般にも知られるようになった。価格も低下してきた。普通の自動販売機に水素水が並ぶ日も近いと思われる。

読み終えて

日常の水素水飲用や水素のバブル浴、治療医学への水素応用がここ数年進んできている。市販される水素水についてはアルミパウチ入りで十分な容存水素量があり、また“還元水”、“○○水素”など、特殊な名称を付けて売り出さない限り過剰宣伝やインチキなどと水素自体に言いがかりを付けられるいわれはない。とはいえ、その効果・効能はやはり使ってみなければわからない。

最後に本書に対しもう少し希望を述べるとすれば、たとえ普及書とはいえ、興味あればさらに詳しく調べられるように引用文献など、巻末最後につけて欲しかった。無論、水素を臨床応用する医学研究会などもあると聞く。そこまでのめり込む者、特に医学関係者であれば、本書程度の普及書には決して手を伸ばさないのではないだろうか?

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