2012年9月7日金曜日

『免疫の反逆』(ドナ・ジャクソンナカザワ著、石山鈴子訳・ダイヤモンド社刊)を読む

  障害管理と機能回復訓練が医療の主体であるリハビリテーション科にも自己免疫疾患による後遺症のアフターケアー・生活指導を求めて紹介入院となるケースが増えている。ギラン・バレーによる感覚異常を伴う不全四肢麻痺例が最も多いが、多発性硬化症や、よく原因のわからない"脊髄梗塞"もよく入院してくるようになった。
 本書『免疫の反逆』*では、アメリカ国民の12人に一人、女性の9人に一人が自己免疫疾患を発症し、この割合は癌や心臓病よりも高いと強調している。そして自己免疫疾患激増の事態認識は米国内でも低いと警鐘を鳴らしている。  自己免疫疾患激増の背景にそれを誘発する何かがあり、その誘因となる物質を表現するために「自己免疫誘発物質(autogen)」という用語を紹介している。
  40年前、レイチェル・カーソンは著書『沈黙の春』の中で、化学の時代が環境変化を引き起こし、人間と共生する多くの種の繁殖や生存を脅かしてしまったかを明らかにした。そして本書の著者ナカザワは様々な疫学的事実とエピソードから、この化学物質による環境汚染が免疫システムを混乱させる原因であると多くの研究者が結論づけるまでに至っていること、その対策を講じることが産業発展を阻害するものとして「不都合な真実」と見られる故に殊更この事実にスポットを当てる必要があることを強調している。
  米国内のループス(SLE)や小児の1型糖尿病が激増、フィンランドでは多発性硬化症(MS)の発症率が過去50年3倍に上昇しているという。これら自己免疫疾患の診断はしばしば困難であり、診断技術向上が見かけ上の発症率上昇に関係している可能性がある。しかし著者は今日のこれら疾患の激増を診断率向上のみ帰することは出来ず、世界的な環境汚染進行の影響が大きく第一義的要因と考えるのがより妥当としている。
  本書を読んで意外に身近にある自己免疫疾患を再認識した。教科書的知識から具体的で生きた知識・疾患として再認識させられた。時に扱う原因不明の脳卒中が抗リン脂質抗体症候群(APS)によるものでなかったのか、などと反省した。また同時に地球規模で進む環境変化の怖さを肌で感じさせられた。
*ドナ・ジャクソンナカザワ著、石山鈴子訳・ダイヤモンド社刊『免疫の反逆』http://amzn.to/OUenjc

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