HSP自体は脳卒中発症直後、その損傷回復過程で産生される組織修復マーカーとして理解するようになり、更に温熱によってHSPが体内で産生され体力回復・運動能力回復につながることから、リハビリテーション臨床の面からも注目するようになった。また学会報告やその著書**から伊藤要子氏の基礎と臨床をつなぐ仕事にも注目していた。水島氏の「HSPと分子シャペロン」はこういった背景からタイトルを聞いてすぐに購入した。そして読み始めて予想以上に新しい情報が盛り込まれていることに興奮させられた。
HSPの変性蛋白の認識メカニズムとその凝集を抑制する仕組み、HSPが分子シャペロンとも呼ばれて、蛋白質生成直後から最終的に分解されるまでのすべての過程に関わっていること、特に蛋白質が正しい立体構造になるためにHSPが重要な役割を果たし、それが障害されると蛋白合成に失敗してアミノ酸まで再分解されるか、あるいは正常蛋白が出来ず病的異常蛋白が生成されてしまうこと、そしてこれがアルツハイマー病やパーキソン病なども含まれる、アンフォールディング(Unfolding)病と総称される疾患発症の原因となることなど、まさに自分が臨床的に関わることの多い加齢性疾患や神経変性疾患がHSPという身体を構成する蛋白の生成と再生に欠かせないシャペロンとしての働きの異常によって一元的に説明・理解可能となったことはとてもすばらしいことだ。
本書では健康サプリメントや抗潰瘍薬での研究でHSP生成を促すセルベックス(掲載写真はそのカプセル)が動物実験レベルでアルツハイマー病の根本的治療薬になり得る可能性も指摘されている。理論的には当然であり今後も注目してゆく必要がある。
*http://amzn.to/SisCU1
**http://amzn.to/NLfYeC (伊藤要子著:加温生活「ヒートショックプロティン」があなたを健康にする マガジンハウス2011年11月10日初版発行)
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