何故、炭水化物が人類を滅ぼす?その意味がわかった気になる本
本書のはじめに著者は「糖質制限」を「驚異のダイエット法」と紹介している。ほんとはなかなか厳しいはずの「糖質制限」をその人柄を反映しているのか、軽い乗りで著者自身がいともたやすく実践しているかのように書き始めている。
著者は「外傷の湿潤治療」を世に紹介した有名人である。外傷の湿潤治療有効性は確かに医師一般に知られ、私自身も日常臨床で応用するが、彼の名前は本書を手に取るまで知らなかった。その有名人が今度は「糖質制限」である。本書を読むと特にその後半で「外傷の湿潤治療」と「糖質制限」の接点が見えてくる。
「糖質制限」は、人類の食物史と密接に関わる食事療法
「糖質制限」は、人類の食物史と密接に関わる食事療法であり、著者も本書の後半で持論を展開している。本書の前半は著者自身の体験を踏まえた「糖質制限」の威力を紹介している。そのダイエット効果に始まり、いわゆる生活習慣病の高血圧や脂血異常も治癒、日中の居眠り解消などなど、良い事づくめである。
続く章節で糖質制限の基礎知識やその問題点に触れている。この中で傑出するのは飲食物中の砂糖量を角砂糖の個数で換算して表示するウエブサイトの紹介である。清涼飲料水の多くに角砂糖十数個以上の糖が含まれていることを知れば、喉が渇いたからといってそれを何本も飲むなど、空恐ろしく感じることだろう 。
次章「糖質制限すると見えてくるもの」では、そもそも、“糖質は栄養素なのか?”と疑問を投げかける。オーソライズされた食事指導で、“総摂取カロリーのうち、糖質6割以上”とされている事に何ら科学的根拠はないとする。
さらに続く本書の後半部分では、穀物生産の現状に始まり、歴史的に産業革命以来、労働搾取の手段として食事に糖質が麻薬のように加えられてきたこと、などなど意外な事実を突きつけて糖質食の意味を紐解いている。
引き続く次々章「哺乳類は・・・」からは、著者のスケール大きい蘊蓄が披露される。この後半部分の内容信憑性は私のような素人には判断できない。しかし全体として大げさに感ずる本書のタイトル、なぜ〈炭水化物が人類を滅ぼす〉のか、少しわかったようにさせられのが本書の魅力でもある。
一読を勧める。
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