大晦日の新聞に掲載された記事に心を動かされ、すでに初版から20年近い歳月を経過した言語社会学者・鈴木孝夫の本を取り寄せ、読み終えた。
風知草:人にはどれだけ物が必要か=山田孝男- 毎日jp(毎日新聞):
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風知草の中で目を引いたのは鈴木孝夫の本書前書きで引用される、トルストイの民話「人にはどれほどの土地がいるか」である。この民話の引用の前書きから始まる本書を相当の緊張と、ある種の憂鬱さを覚えながら、現代社会の時代閉塞的状況に照らして20年前に書かれたものとは思えない達観した現在に通ずる認識に平伏して最後まで読み通した。
現在の不況は歓迎すべき第一歩
なんとアイロニックな言いようだろうか。本書後半の1992年10月グリーンブルー(日本公害防止技術センター)創立20周年記念シンポ講演「国際化時代の環境問題」で発言された文章の一部である。今や自民党安倍政権となり、円高デフレ不況克服として無定見とも見える歯止めない国債増発をして経済活性化策が取られようとしている。記事「風知草」後半で山田はこの記事を書くつい数日前、著者鈴木に会って、彼の2012年歳末所感を記している。現実が鈴木の理想と逆方向へ動き、彼の警告通り、手遅れとなった全地球規模破壊がさらに進むのではないか?その不気味な足音は20年前とは違ってより明瞭に聴こえていると感ずるのは小生だけではないだろう。
金魚鉢としての地球に住んでいること
人は自分を含めて快適で豊かな生活を求めて日々努力を重ね、切磋琢磨して毎日を送っている。そして人一倍の努力をすれば、それなりの報酬や待遇を得て、贅沢とまでは行かずともそれなり快適な生活が送られるのは当然と考えている。
地球という規模でみたとき物資の循環では金魚鉢と同じ閉鎖系に我々は生活している。我々がこの金魚鉢の中で快適生活を願うとき、それは人間以外の種や自然の多くの犠牲の上に築かれていることを知っておく必要があるというのだ。
自然や環境がどんどん破壊されてゆく
「日本野鳥の会」顧問でもある著者鈴木はみかける野鳥の種類が激減している事を当時から指摘している。地球温暖化、「神の火」原子力を手に入れた錯覚から原発を推進し、事故で制御不能に陥っている自然災害後の福島原発。神や自然という人知を超えた存在に畏敬の念を忘れた、経済万能、科学万能の考えは益々金魚鉢の中にいる我々をどんどん窮地に落とし込んでいっている。
「高齢化に加えて未曾有の経済格差・貧困社会をどうするか?」という自分一人ではどうにもならない課題はともかく、以前読んで紹介した『免疫の反逆』、すなわち、ここ数年の自然環境や生活環境悪化から自己免疫疾患急増の警鐘を鳴らした好著を引用するまでもなく、自己の健康管理・維持も困難となってきていることを実感する。本書で書かれた鈴木の予言、“地球はこのままゆけば確実に破滅する”が真実そして現実とならないように祈るばかりである。
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